忘れていませんか?所得控除・その③。医療費控除

ポイント:医療費が年間10万円を超えていなくても医療費控除を受けられる場合がある。


こんにちは。税理士の関田です。

忘れやすい所得控除、3回目は医療費控除です。

平成29年から、従来型の医療費控除に加え、医療費控除の特例(セルフメディケーション税制)もスタートし、どちらか有利な方を選択できるようになりました。

⇒ 国税庁HP 『セルフメディケーション税制』

ここでは、従来型の医療費控除に絞って、適用を忘れやすいケースを解説します。

従来型の医療費控除とは

医療費控除とは、本人又は生計を一にする親族の医療費が年間で一定額を超えた場合に、本人の所得から次の算式で計算した金額(最高200万円)を差し引くことで所得税を安くできる制度です。

(1)総所得金額等が200万円以上の人

  「医療費の合計額 △ 保険金などの補填金 △ 10万円」

(2)総所得金額等が200万円未満の人

  「医療費の合計額 △ 保険金などの補填金 △ 総所得金額等の5%」

※「総所得金額等」とは、純損失、雑損失、その他各種損失の繰越控除後の総所得金額、特別控除前の分離課税の長(短)期譲渡所得の金額、株式等に係る譲渡所得等の金額、上場株式等に係る配当所得の金額、先物取引に係る雑所得等の金額、山林所得金額及び退職所得金額の合計額をいいます。

医療費控除を忘れやすいケース

総所得金額等が200万円未満の場合

医療費控除は医療費が年間10万円を超えた場合に使えるというイメージがあるため、10万円を超えなかった場合に適用を諦めてしまう方がいます。

しかし、医療費が10万円を超えなくてもその方の総所得金額等が200万円未満であれば、「総所得金額等の5%」を超えた部分の金額は医療費控除の対象となります。

例えば年収240万円(月収20万円)の給与所得者の場合、給与所得控除後(概算経費控除後)の給与所得は150万円ですので、かかった医療費が9万円であれば、

「90,000円-150万円×5%=15,000円」

を医療費控除することができます。

参考までに、総所得金額等が200万円を超えるかどうかのラインですが、

・給与所得者の場合 … 給与が約310万円

・年金受給者(65歳未満)の場合 … 年金が約316万円

・年金受給者(65歳以上)の場合 … 年金が約320万円

となっています。

年収が上記のラインを下回る場合には、医療費が10万円を超えなくても医療費控除を受けられる可能性がありますので、医療費が「総所得金額等の5%」を超えるかどうか計算してみましょう。

実際にかかった医療費を上回る保険金をもらっている場合

入院・手術などにより保険会社から実際に支払った医療費を上回る給付金を受け取った場合、年間の医療費から給付金を引いた金額が10万円を超えず、医療費控除が受けられないと思い諦めてしまう方がいます。

しかし、給付金や保険金などの補填金はその対象となった医療費のみから差し引くこととなっており、それ以外の医療費が10万円(または総所得金額等の5%)を超える場合には、医療費控除を受けることができます。

具体例でご説明します。

<支払った医療費>

・骨折時の入院手術代 20万円

・歯の治療代 15万円

→ 計35万円

<補填金>

・骨折時の入院手術に対する給付金 40万円


上記の場合、

「支払った医療費35万円-給付金40万円=△5万円」

となり医療費控除を受けられないと思いがちですが、給付金40万円はその目的となった入院手術代20万円のみから差し引きますので、関係のない歯の治療代15万円は医療費控除の対象となります。

引ききれなかった給付金20万円は他の医療費から引く必要はなく、また実質的に儲かっているわけですが課税されることもありません

控除し忘れていることに気づいたら

もし過年度の確定申告で控除し忘れていたり、そもそも控除できないと思って確定申告していなかった場合、申告期限から5年間は税務署へ「更正の請求」又は「還付申告」をして税金を還付してもらうことができます。

医療費控除は家族全員分の医療費をどなたか一人からまとめて控除することができますが、その際「一番税率の高い方=所得の多い方」から控除するのが有利です(医療費控除は税率をかける前の所得から控除するため)。

賢く利用して、節税を図りましょう。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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