譲渡所得と国民健康保険料との関係・その②。株式を売却した場合
ポイント:株式等を売却して利益が出たときは、確定申告した場合のみ国民健康保険料等に影響が出る。ただし、住民税で申告不要を選択すれば保険料には影響なし。
こんにちは。税理士の関田です。
前回は、不動産を売却した場合の国民健康保険料又は後期高齢者医療保険料(以下「国民健康保険料等」といいます)への影響のお話でした。
⇒ 前回ブログ 『譲渡所得と国民健康保険料との関係・その①。不動産を売却した場合』
今回は株式や投資信託(以下「株式等」といいます)を売却した場合のお話です。
目次
国民健康保険料等の計算方法
(前回のおさらいです)
国民健康保険料等の計算方法は各自治体により微妙に異なりますが、おおむねどの自治体も以下の要素を組み合わせて計算します。
・国民健康保険料 … 所得割、均等割、資産割、平等割
・後期高齢者医療保険料 … 所得割、均等割
このうち、前年の所得をベースに計算するのが「所得割」です。
所得割額は、
「( 総所得金額等 - 33万円 )× 保険料率 」
で計算します。
株式等を売却して利益が出ると「所得割」が増える?
「総所得金額等」とは、簡単にいえば前年度の所得金額の合計額ですが、ここには株式等を売却した場合の譲渡所得も含まれることになります。
ただし、源泉徴収ありの特定口座の場合、特定口座内で売却益の計算・納税が完結するため、確定申告は不要です(申告してもしなくてもよい)。
申告不要を選択した場合、たとえ株式等の売却益が生じていたとしても、国民健康保険料等の所得割額の計算上「総所得金額等」には含まれないため、保険料が増えることはありません。
つまり、国民健康保険料等に影響が出るのは、株式等の売却益について確定申告した場合のみということです。
株式等の売却で国民健康保険料等に影響が出るケースとは?
株式等を売却して利益が出たことにより翌年の国民健康保険料等が上がるケースとしては、以下のような場合が考えられます。
一般口座・源泉徴収なしの特定口座で売却益が出た場合
一般口座や源泉徴収なしの特定口座で売却益が出た場合、確定申告が必要となりますので、翌年の国民健康保険料等に影響が出ます。
複数の口座の損益を通算して売却益が残った場合
複数の口座を持っていて、利益が出ている口座と損失が出ている口座がある場合、確定申告して損益を通算することができます。
もし通算後に売却益が残った場合、翌年の国民健康保険料等に影響が出ます。
前年以前の繰越損失と通算して売却益が残った場合
過去3年間に株式等の売却損が発生し、確定申告して損失を繰り越していた場合、売却益を申告することで繰越損失と通算することができます。
もし通算後に売却益が残った場合、翌年の国民健康保険料等に影響が出ます。
住民税のみ申告不要を選んだら?
場合によっては、税金を減らすために確定申告して損益通算や損失繰越控除を適用した結果、減った税金以上に国民健康保険料等が増えてしまうというケースも考えられますので注意が必要です。
なお、株式等の譲渡所得については配当所得と同様、「所得税」と「住民税」で別々の課税方式(申告分離課税 or 申告不要)を選択できることになっていますが、国民健康保険料等に影響するのは「住民税」で選択した課税方式です。
したがって、たとえば、
- 所得税 → 確定申告して申告分離課税を選択し、損益通算や損失繰越控除を受けて節税
- 住民税 → 住民税の申告をして申告不要を選択し、税金は売却益の5%を天引きのまま
- 国民健康保険料等 → 住民税で申告不要を選択しているため、保険料に影響なし
というパターンもありです。
どういったパターンがトータルで一番有利になるのか、申告前にシミュレーションを行うことが重要となります。
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
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