児童手当と所得制限。不動産や株式を売却して利益が出た場合は?
ポイント:児童手当の所得制限の判定上、不動産の売却による譲渡所得は影響するが、株式等の売却による譲渡所得は影響しない。
こんにちは。税理士の関田です。
中学生以下の子どもを養育する保護者には現在、市区町村から児童手当が支給されていますが、一定以上の所得がある場合には支給が制限されます。
所得制限に引っ掛かるかどうかは受給者の前年度の所得により判定しますが、もし前年にたまたま不動産や株式を売却して大きな利益が出てしまった場合にはどのように取り扱われるのでしょうか?
児童手当と所得制限
児童手当の額
受給者の所得が制限未満の場合に支給される児童手当の額は、児童の年齢と人数に応じて以下のとおり定められています(2018年12月現在)。
支給対象年齢 | 1人当たり支給額(月) |
0歳~3歳未満 | 15,000円 |
3歳~小学校修了前 | 10,000円(第3子以降は15,000円) |
中学生 | 10,000円 |
所得制限
所得制限の対象となるのは受給者の前年の所得ですが、世帯の合計所得ではなく、あくまで保護者のうちいずれか収入の多い人の所得だけで判定するのがポイントです。
夫婦共働き世帯の場合には、収入の多い夫(もしくは妻)の前年の所得が所得制限限度額を超えているかどうかで判定します。
所得制限限度額は扶養親族等の数に応じて以下のとおり定められていますが、もし所得制限限度額を超えてしまった場合でも、特例給付として児童1人当たり月5,000円が支給されています(2018年12月現在)。
扶養親族等の数 | 所得制限限度額 | 収入目安(会社員の場合) |
0人 | 630万円 | 833.3万円 |
1人 | 668万円 | 875.6万円 |
2人 | 706万円 | 917.8万円 |
3人 | 744万円 | 960.0万円 |
4人 | 782万円 | 1002.1万円 |
5人以上 | 1人増えるごとに38万円加算 |
※上記の所得制限限度額には、所得から一律控除される8万円を加算しています。
なお、「所得」とは収入から経費を差し引いた金額です。
会社員の場合には給与収入から概算経費(給与所得控除)を差し引いて所得が計算されますので、額面の給与収入が表の右側の金額を超えるかどうかが目安となります。
不動産・株式等の売却益は所得制限に影響する?
では、前年にたまたま不動産や株式を売却して多額の利益が出た場合、所得制限の判定にはどう影響するのでしょうか?
不動産の売却益が生じた場合
前年に土地や建物などの不動産を売却して利益(譲渡所得)が生じた場合、その譲渡所得も含めて所得制限の対象となるかどうかを判定します。
たとえ年収500万円のサラリーマンだったとしても、もし親から相続した土地を売却して1,000万円の利益が出た場合、その翌年は所得制限に引っ掛かるため児童手当を受給することはできません(ただし、特例給付として児童1人当たり月5,000円は受給可能)。
なお、譲渡所得について収用や居住用財産の譲渡等による特別控除が適用される場合、以前は特別控除”前”の金額で判定されていましたが、平成30年度からは特別控除”後”の金額で判定されるようになっています。
株式等の売却益が生じた場合
株式や投資信託などの売却による利益(譲渡所得)については、所得制限には一切影響しません。
前年に株の売買でいくら儲かろうが、それ以外の所得が所得制限限度額を超えていない限り、通常通り児童手当を受給することができます。
まとめ
児童手当の受給要件については、近い将来見直しが行われる可能性があります。
具体的には、
- 所得制限を世帯の合計所得で判定する
- 特例給付を廃止する
など、縮小方向の案が検討されているようです。
今後の動向に注目しておきましょう。
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
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