内縁の夫婦は税金で損?事実婚の税務上の取り扱い・所得税編

ポイント:事実婚夫婦は所得税上、他人と同様に扱われる。法律婚夫婦よりも年間で数十万円損する場合も。


こんにちは。税理士の関田です。

婚姻届をあえて出さず、事実婚(内縁)という状態を選ぶカップルが増えてきています。

一時期流行ったドラマの影響もあるようですが、日本の税制は現状、事実婚に対して厳しい内容になっていますので、安易な選択は避けたいところです。

事実婚に対する所得税・相続税上の取り扱いを2回にわたって解説します。

まずは所得税編です。

所得控除

配偶者控除・配偶者特別控除

配偶者の所得が一定額以下の場合に、本人の所得から「1万円~38万円」が控除される制度です。

⇒ 国税庁HP 『配偶者控除』

⇒ 国税庁HP 『配偶者特別控除』

この控除の対象となる「配偶者」は、「民法の規定による配偶者」でなければなりません。

つまり、事実婚(内縁)の場合には配偶者控除・配偶者特別控除は適用されないということです。

障害者控除

本人、本人と生計を一にする配偶者(合計所得金額38万円以下)又は扶養親族が障害者に該当する場合に、本人の所得から「27万円~75万円」が控除される制度です。

⇒ 国税庁HP 『障害者控除』

この場合の生計を一にする「配偶者」とは、「民法の規定による配偶者」のことを指します。

つまり、事実婚(内縁)の配偶者が障害者に該当しても、障害者控除は適用されないということです。

医療費控除

本人又は本人と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合において、その支払った医療費の年間合計額が10万円(総所得金額等が200万円未満の方は、総所得金額等の5%)を超えるときは、超えた部分の金額が所得から控除される制度です。

⇒ 国税庁HP 『医療費控除』

この場合の生計を一にする「配偶者」とは、「民法の規定による配偶者」のことを指します。

つまり、事実婚(内縁)の配偶者の医療費を支払っても、医療費控除は適用されないということです。

社会保険料控除

本人又は本人と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合に、支払った保険料が所得から控除される制度です。

⇒ 国税庁HP 『社会保険料控除』

この場合の生計を一にする「配偶者」とは、「民法の規定による配偶者」のことを指します。

つまり、事実婚(内縁)の配偶者の社会保険料を負担しても、社会保険料控除は適用されないということです。

生命保険料控除

保険金等の受取人の全てを本人又はその配偶者その他の親族とする生命保険契約の保険料を支払った場合に、一定の金額が所得から控除される制度です。

⇒ 国税庁HP 『生命保険料控除』

この場合の「配偶者」とは、「民法の規定による配偶者」のことを指します。

つまり、事実婚(内縁)の配偶者を保険金受取人とする生命保険料を支払っても、生命保険料控除は適用されないということです。

青色事業専従者・事業専従者

青色申告の個人事業主で、生計を一にする配偶者その他の親族が事業に従事している場合、税務署へ「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出しなければ、これらの人に給与を支給しても必要経費として認められません。

また、白色申告の個人事業主の場合には、これらの人に給与を支給しても一切必要経費にできず、配偶者の場合には最高86万円、配偶者以外の親族の場合には最高50万円の「事業専従者控除」が認められるだけです。

⇒ 国税庁HP 『青色事業専従者給与と事業専従者控除』

この場合の「配偶者」とは、「民法の規定による配偶者」のことを指します。

したがって、事実婚(内縁)の配偶者に対する給与は他人に対する給与と同じ扱いになりますので、何の届出もなく全額を必要経費にすることができます。

まとめ

社会保険では実態を重視することから、事実婚(内縁)関係を証明できれば法律上の夫婦と同様に扱われますので、パートナーを健康保険や厚生年金の扶養に入れることができますし、どちらかが亡くなった場合には遺族年金も受給できます。

一方、税法では形式を重視しますので、事実婚(内縁)関係にあったとしても他人と同様に扱われてしまいます。

事実婚夫婦の場合、特にどちらか一方が働いていない(又は収入が少ない)ケースでは、配偶者控除などの所得控除を受けられないことで法律婚夫婦よりも年間数万円~数十万円の税負担増になる可能性もあります。

婚姻のあり方を選択する場合には、税金面の違いも考慮した方がいいでしょう。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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