住宅ローンの繰上返済方法・その③。住宅ローン控除 vs. 繰上返済

ポイント:ローン金利が1%を下回る場合には、住宅ローン控除期間中は繰上返済しない方がお得に。ただし「ローン残高」が「住宅ローン控除の対象となるローン残高の限度額」を超えている場合、超えている部分は一部繰上返済してもOK。


こんにちは。税理士の関田です。

住宅ローンの繰上返済を行う場合に注意しなければならないのが、住宅ローン控除との兼ね合いです。

「繰上返済による利息削減効果」「住宅ローン控除による減税効果」を加味することが重要になります。

住宅ローン控除の計算方法

住宅ローン控除とは、住宅ローンの年末残高に応じて一定額を所得税から控除する減税制度です。

控除期間や最大控除額は、居住した年度等によって異なります。

たとえば平成30年に購入(消費税8%)し居住を開始した場合、

・控除期間は10年間

・控除対象となるローン残高の限度額は4,000万円(一般的な住宅の場合)

・控除率は1%

ですので、

・1年あたりの控除限度額は「4,000万円×1%=40万円」

・最大控除額は「40万円×10年間=400万円」

となります。

ただし、住宅ローン控除は支払うべき所得税を軽減する制度ですので、そもそも所得税が少ない場合には控除枠を使いきれないこともあります(所得税から引ききれない場合、一部住民税から引くこともできます)。

繰上返済と住宅ローン控除、その効果を比較

「住宅ローン控除期間中は繰上返済せず住宅ローン控除による減税効果をフルに受けるべき」なのか、それとも「住宅ローン控除額が減ったとしても繰上返済による利息削減効果をとるべき」なのか、ローン金利別で比較してみます。

金利以外の借入条件は以下の通りとし、住宅ローン控除枠は使い切れる(所得税から引ききれる)ものとします。

・購入時期:平成30年4月(消費税8%)

・借入金額:3,000万円

・返済期間:30年

・返済方式:元利均等返済

・繰上返済タイプ:返済期間短縮型

・繰上返済額:当初から10年間で総額500万円

ローン金利1.5%(10年固定)の場合

繰上返済時期 ①利息削減効果 ②ローン減税効果 効果合計 ①+②
繰上返済なし 0円 2,568,800円 2,568,800円
1年ごとに50万円ずつ返済 1,931,954円 2,332,100円 4,264,054円
10年後に500万円を返済 1,491,223円 2,568,800円 4,060,023円

「繰上返済による利息削減効果」と「住宅ローン控除による減税効果」の合計額で比較すると、毎年繰上返済した方が10年後にまとめて繰上返済するよりも約20万円お得という結果になりました。

これは、ローン金利(1.5%)が住宅ローン控除の控除率(1%)を上回っているためです。

ローン金利1%(10年固定)の場合

繰上返済時期 ①利息削減効果 ②ローン減税効果 効果合計 ①+②
繰上返済なし 0円 2,541,000円 2,541,000円
1年ごとに50万円ずつ返済 1,222,554円 2,308,500円 3,531,054円
10年後に500万円を返済 953,374円 2,541,000円 3,494,374円

今度はローン金利(1%)と住宅ローン控除の控除率(1%)が同じのため、効果の合計額もほとんど変わらないという結果になりました。

ローン金利0.5%(10年固定)の場合

繰上返済時期 ①利息削減効果 ②ローン減税効果 効果合計 ①+②
繰上返済なし 0円 2,512,600円 2,512,600円
1年ごとに50万円ずつ返済 580,276円 2,283,600円 2,863,876円
10年後に500万円を返済 457,150円 2,512,600円 2,969,750円

今度はローン金利(0.5%)が住宅ローン控除の控除率(1%)を下回っているため、住宅ローン控除期間中は繰上返済せず10年後にまとめて繰上返済した方が約10万円お得という結果になりました。

住宅ローン控除期間中でも繰上返済したほうがいいケース

ローン金利が1%以上の場合

住宅ローン控除の控除率はローン残高の1%ですので、ローン金利が1%以上であれば、上記のシミュレーションの通り繰上返済した方がお得です。

所得が少なく住宅ローン控除枠を使いきれない場合

所得税(住民税)が少ないため住宅ローン控除枠を使いきれていない場合には、一定額までなら繰上返済を行っても住宅ローン控除額に影響がないため、繰上返済の効果が発揮されます。

「一定額」がどの程度なのかは、その方の所得とローン残高によるため、具体的なシミュレーションが必要です(ここでは省略します)。

「ローン残高」が「住宅ローン控除の対象となるローン残高の限度額」を超えている場合

住宅ローン控除は居住した年度等により、控除対象となるローン残高の限度額が決まっています。

たとえば、限度額が4,000万円でローン残高が5,000万円ある場合、限度額を超えている1,000万円部分については繰上返済を行っても住宅ローン控除額には影響がないことになります。

ただし、ローン残高は徐々に減少しますので、まだ住宅ローン控除期間がかなり残っている状況で限度額ギリギリまで繰上返済してしまうと、残りの期間の住宅ローン控除額に影響が出るため、計画的に行う必要があります。

住宅ローン控除期間中の繰上返済は年末ではなく年明けに行う

最後にテクニック的なお話になりますが、住宅ローン控除期間中の繰上返済は年末ではなく年明けに行った方がお得です。

なぜなら、住宅ローン控除額の計算は「年末のローン残高×1%」だからです。

冬のボーナスが出て「さあ繰上返済だ!」と思っても、あえて一呼吸置くことが大事です。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

当事務所のサービスメニュー・料金について

当事務所では、法人・個人事業主の「税務顧問業務」のほか、相続税申告・贈与税申告・譲渡所得税申告といった「資産税業務」を専門に行っております。
初回のご面談は無料です(単発の税務相談・コンサルティングを除く)。
オンラインでのビデオ面談もお受けしております。