事業所得の必要経費にならない会費とは?政治連盟、同窓会・・・

ポイント:業務の遂行上必要な部分を明らかにすることができない会費は必要経費にならない。


こんにちは。税理士の関田です。

個人事業を営んでいる方であれば、何らかの団体に加入せざるを得ず、会費を支払わなければならないこともあるでしょう。

たとえば税理士の場合、「税理士会」というものに加入しなければ税理士業務を行うことさえできません(会費が高い・・・)。

税理士会費のような明らかな必要経費はともかく、それ以外にも業務に少しでも関連する会費があれば何でも必要経費として認められると思いがちですが、実務上の判定は意外とシビアです。

今回は、事業所得や不動産所得の計算上、必要経費になりそうでならない会費の代表例をご紹介しましょう。

そもそも必要経費とは?

まずは前提として、どのような支出が必要経費として認められるのかを整理しておきましょう。

個人事業主が行う支出は、大きく以下の3つに分類されます。

①業務上の費用・・・〇

②家事費・・・✖

③家事関連費・・・△

「①業務上の費用」は商品の仕入原価や店舗の家賃など業務の遂行上直接必要な支出が該当し、もちろん全額が必要経費となります。

「②家事費」は100%居住用の家賃・光熱費や食費などのプライベートな支出(いわゆる生活費)ですので、当然ながら必要経費としては認められません

「③家事関連費」は業務とプライベート両方に関連する支出で、例えば自宅の一部を事業に使用している場合の家賃・光熱費、公私兼用のスマホ代などが該当しますが、このうち『業務の遂行上必要であった部分を明らかにできる場合のその部分の金額』だけが必要経費として認められています(この区分の仕方を「家事按分」といいます)。

必要経費にならない会費・3選

それでは上記を前提に、実務上、誤って必要経費に入れてしまいそうな会費を3つご紹介します。

政治連盟の会費

日本では、職能団体や業界団体が政治活動を行うため、団体からは独立した組織として政治連盟を結成しているケースが多く見受けられます。

代表例は、弁護士や司法書士などの士業の政治連盟、医師や歯科医師の政治連盟、不動産業の政治連盟など。

これら政治連盟の会費は、過去の裁判例や裁決事例において、事業所得の必要経費にはならないことが示されています。

理由としては、

  • 会費が業務の遂行上直接必要であるとはいえない
  • 仮に家事関連費であったとしても、業務の遂行上必要な部分を明らかにすることができない

といったところです(以下の会費についても理由は概ね同じです)。

ロータリークラブ・ライオンズクラブの会費

ロータリークラブとライオンズクラブはどちらも社会奉仕団体ですが、ビジネスパーソン同士の交流・営業の場としても利用されています。

そのため、これらクラブの会費を「交際費」として経費に入れているケースも多いかと思いますが、過去の裁判・裁決では、弁護士や司法書士などがこれらの会費を必要経費に計上して否認された事例がいくつもあります。

同窓会費

学校の同窓会の参加費についても、残念ながら必要経費としては認められません。

特に個人の開業医は、大学の同窓会を情報交換や患者紹介目的で利用するケースも少なくないかと思いますが、過去の裁決事例では業務の遂行上直接必要な経費とは認められないとされています。

まとめ

上記のような会費を必要経費に計上していても税務調査では指摘されなかった、という例もあるかと思います。

ですが、それは「認められた」というよりも「少額だから見逃してもらえた」という方が近いのでしょう。

あまりにも金額が大きければ指摘される可能性は高いですのでご注意ください。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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