配偶者への退職金は経費になる?青色専従者と中退共・小規模企業共済
ポイント:専従者への退職金は経費にならないが、共済制度を利用して間接的に退職金を経費にすることはできる。
こんにちは。税理士の関田です。
個人事業主には自身の「退職金」がありません(そのため小規模企業共済などを利用して老後資金を準備しておく必要があります)が、雇っている従業員が辞めた場合には退職金を支払うことができます。
では、妻(夫)を青色事業専従者としている場合、辞めた専従者に対しても退職金を支払うことは可能でしょうか?
目次
専従者に直接退職金を支払うことはできない
所得税の世界では、生計を一とする家族への給料は原則として必要経費になりませんが、青色事業専従者に対する給料については、税務署に届け出ることを条件に必要経費として認められています。
ただし、経費になるのはあくまで「給与」か「賞与」だけ。
専従者への「退職金」は経費として認められません。
専従者への退職金を”事実上”経費にできる2つの方法
青色事業専従者へ退職金を直接支払うことはできないものの、退職金を実質的に経費とすることは可能です。
以下、2つの方法をご紹介しましょう。
①中小企業退職金共済に加入する
1つは、中小企業退職金共済(中退共)に加入する方法。
中退共は従業員のための退職金制度ですが、専従者についても「従業員」の立場で加入させることが可能です。
掛金は月額5,000円~30,000円で、支払った掛金の全額が事業主の必要経費となります。
なお、実際に退職した際には共済から専従者へ直接退職金が支払われるため、専従者にとっては「退職所得」となりますが、事業主には課税関係が生じません。
②小規模企業共済に加入する
もう1つは、小規模企業共済に加入する方法。
小規模企業共済はあくまで個人事業主自身の退職金制度ですが、事業主の「共同経営者」についても加入が認められています。
つまり、専従者が共済に加入する場合には「共同経営者」の立場で加入申込みを行うことになります。
掛金は月額1,000円~70,000円で、支払った掛金の全額が専従者の所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象です。
中退共と違い、掛金を支払うのはあくまで専従者自身ですので、事業主が節税効果を得るためにはその分専従者への給与を増額させなければなりません。
増額後の給与が税務署へ届出済みの金額を超える場合には、「青色事業専従者給与に関する変更届出書」の提出も必要です。
なお、実際に退職した際には共済から専従者へ直接退職金が支払われるため、専従者にとっては「退職所得」となりますが、事業主には課税関係が生じません(ここは中退共と同じ)。
中退共と小規模企業共済、どちらが有利か?
中退共に加入する場合は「従業員」として、小規模企業共済に加入する場合は「共同経営者」としての加入となるため、両方に加入することはできません。
では、どちらに加入した方が有利でしょうか?
掛金でいえば、中退共は上限が月3万円であるのに対し、小規模企業共済は上限が月7万円ですので、節税効果を最大限に生かしたいのであれば小規模企業共済の方がメリットがあるといえます。
また、中退共は全員加入が原則のため、専従者以外の従業員がいる場合にはそちらの掛金の負担も考慮しなければなりません。
一方、小規模企業共済の方は事業主と一体となって経営に携わっていることが前提ですので、中小機構の認める「共同経営者」要件を満たしているといえるかどうかが重要となります。
どちらに加入すべきか(そもそも加入すべきかどうか)、掛金をいくらに設定すべきか等は、所得規模や配偶者の働き方にもよりますので、できれば事前に顧問税理士などへ相談した方が良いでしょう。
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
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