会社・社長間の金銭の貸し借りと利息。役員借入は無利息でも大丈夫?
ポイント:会社が役員へ金銭を貸し付けた場合には適正な利息を取る必要があるが、会社が役員から金銭を借り入れた場合には無利息でも問題ない。
こんにちは。税理士の関田です。
会社を経営していて運転資金や設備資金が足りなくなった場合に、社長個人から会社へお金を貸すことはよくありますが、そこに利息を付すことはあまりありません。
一方、社長個人が何らかの理由でお金が必要になった場合、会社から社長個人へお金を貸すケースも稀にありますが、こちらについては社長から会社へ利息を支払う必要があります。
同じ会社・社長間のお金の貸し借りであっても取扱いが異なるのは一体なぜでしょうか?
目次
会社から役員への貸付は利息を取る
利息を取るべき理由
会社はあくまで営利の追求を目的とする組織ですので、無利息で金銭を貸すという行為には経済的な合理性がなく会社の目的に反することになります。
したがって、たとえ相手がオーナー社長であったとしても、貸し出した金銭に対しては適正な利息を受け取らなければなりません。
適正な利息とは
会社が受け取るべき利息については、次のように定められています。
① 他から借り入れた金銭を貸し付けたことが明らかな場合
→ その借入金の利率により計算
② その他の場合
→ 貸付を行った日の属する年の租税特別措置法第93条第2項(利子税の割合の特例)に規定する特例基準割合による利率により計算
※実際の利率は以下のページで確認できます(平成30年中の貸付は1.6%)
適正な利息を授受した場合
上記の利率により適正な利息を計算し、役員から会社へ支払った場合の取扱いは以下のとおりです。
会社側の取扱い
会社は受け取った利息を『受取利息』として収入計上します。
役員側の取扱い
役員が支払った利息については、基本的には家事費となります。
ただし、個人で営む事業に必要な資金を借り入れた場合には、事業所得や不動産所得などの必要経費となるケースもあります(会社から借りた金銭で賃貸用不動産を購入した場合など)。
適正な利息を授受しなかった場合
無利息または適正な利率より低い利率で計算した利息しか授受しなかった場合の取扱いは以下のとおりです。
会社側の取扱い
「適正な利息」と「実際に受け取った利息」との差額を一旦受け取ったものとして『受取利息』に計上するとともに、同額を役員に対して支払ったものと考え『役員報酬』として処理します。
なお、差額が毎月おおむね一定していれば、役員報酬は定期同額給与として損金になります。
役員側の取扱い
「適正な利息」と「実際に支払った利息」との差額については役員報酬を受け取ったものとされ、給与所得として所得税が課税されます。
役員から会社への貸付は無利息でOK
利息を取らなくて良い理由
会社が営利の追求を目的とする組織であることを考えると、資金調達のコストはなるべく低い方が望ましいことになります。
したがって、役員からの借入については、適正な利率より低い場合はもちろん、無利息であっても税務上は問題ありません。
利息を授受した場合
もちろん、利息を取ってはいけないということではありません。
もし利息を授受した場合の取扱いは以下のとおりです。
会社側の取扱い
会社は支払った利息を『支払利息』として経費計上します。
ただし、「実際に支払った利息」が「適正な利息」を超える場合には、超える部分については『役員報酬』を支給したものとして処理します。
役員側の取扱い
役員が受け取った利息については雑所得として所得税が課税されます。
ただし、「実際に受け取った利息」が「適正な利息」を超える場合には、超える部分については役員報酬を受け取ったものとされ、給与所得として所得税が課税されます。
利息を授受しなかった場合
会社側の取扱い
特段、処理は不要です。
役員側の取扱い
実際に利息を受け取っていないため所得税は課税されません。
まとめ
実務上、役員からの借入金についてあえて利息を付すことは少ないですから、気を付けなければいけないのは役員への貸付金でしょう。
また、役員だけでなく従業員にお金を貸す場合も基本的な取扱いは同じです。
税務調査に備え、利息の計算根拠を明確にしておきましょう。
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
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