会社が役員から借入れした場合の勘定科目。『短期借入金』はダメ?

ポイント:役員からの借入金を「固定負債」の部に『役員借入金』と表示するだけで金融機関からの評価が上がる場合も。


こんにちは。税理士の関田です。

中小零細企業では資金繰りの都合上、社長をはじめとする役員が会社にお金を貸し付けることがよく行われます。

会社側から見ると「借入金」です。

会社が役員からお金を借りること自体は何ら問題ありませんが、銀行融資を意識するのであればその会計処理には注意を払いましょう。

よくある処理:流動負債『短期借入金』

役員からの借入金について、安易に『短期借入金』とされているケースをよく見かけます。

おそらく「一時的に借りただけだから」という理由でこのような処理をしているものと思われますが、資金繰りが厳しい状況ではすぐに返済できずそのまま決算を迎えてしまうこともしばしばです。

『短期借入金』は貸借対照表上、「流動負債」の部に表示されます。

おすすめの処理:固定負債『役員借入金』

『短期借入金』が間違った処理というわけではありませんが、金融機関からすでに融資を受けている、あるいはこれから融資を受けたいということであれば、以下のような処理をお勧めします。

勘定科目は『役員借入金』

まず科目名ですが、あくまで”役員からの借入れ”であることをアピールするため『役員借入金』としましょう。

役員借入れについてわざわざ「金銭消費貸借契約書」を作成して返済条件等を定める会社はほとんどないでしょうから、基本的には”無利息”かつ”返済期限なし”であり、返済順位の最も低い債務です。

銀行はこのような『役員借入金』を『資本金』と同等に見てくれる場合があります。

つまり、決算書上は債務超過(資産よりも負債の方が多い状態)であっても、その原因が『役員借入金』にある場合、実態としては債務超過ではないと判断してもらえる可能性があるということです。

表示場所は「固定負債」の部

また、『役員借入金』の表示場所は「流動負債」の部ではなく「固定負債」の部にしましょう。

理由は、貸借対照表をベースとした財務指標が改善するからです。

たとえば、流動比率は「流動資産 ÷ 流動負債 × 100」で計算される指標で、高い方が好ましいとされていますので、流動負債が減るのは指標にとってプラス要因となります。

またその裏返しになりますが、固定長期適合率は「固定資産 ÷(固定負債+自己資本)× 100」で計算される指標で、低い方が好ましいとされていますので、固定負債が増えるのは指標にとってプラス要因となります。

これらの指標はもちろん銀行による格付けに影響するため、同じ勘定科目でも「流動」か「固定」かの区別は非常に重要なのです。

まとめ

役員借入れをこれまで長年『短期借入金』として表示していたとしても、これを固定負債『役員借入金』に変更するのは難しいことではありません。

経営者の方は会社の決算書をあらためて見直し、もし自身からの借入が『短期借入金』になっている場合には経理担当者や税理士に相談してみましょう。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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