遺産分割協議書は1通にまとめなくても良い?複数に分けるメリット
ポイント:必ずしも全財産を1通の遺産分割協議書にまとめて記載する必要はない。財産の種類ごとなど、複数の分割協議書を作った方が望ましいケースも。
こんにちは。税理士の関田です。
「遺産分割協議書」と聞くと、多くの人は、すべての財産に関する分割内容が網羅的に記載されているものを思い浮かべるでしょう。
しかし実務上は、複数の分割協議書を作ることも珍しくありません。
分割協議書を複数に分けるメリットについてお話しましょう。
目次
遺産分割協議書は何種類作っても良い
今や、遺産分割協議書はそのひな形がネット上に溢れており、ちょっと検索してみればわかるとおり、そのどれもが似たような書式になっています。
とはいえ、分割協議書は別に法律上書式が決まっているわけではありません。
少なくとも不動産などの名義変更手続きに耐えうるだけの条件を具備している必要はあるものの(←ここが一番大事なのですが)、様式は意外と自由です。
また、公開されているひな形の多くは全財産を1つの分割協議書にまとめたものになっていますが、実は、分割協議書は何種類かに分けて作っても良いのです。
複数の遺産分割協議書を作るメリット
遺産分割協議書を複数に分けることには、以下のようなメリットがあります。
名義変更手続きがスピーディに進む
遺産分割協議には意外と時間がかかることも少なくありません。
たとえば、
「不動産の分割方法は決まったけど、それ以外はまだ・・・」
といったケースでは、分割の確定した不動産だけの協議書を作成しておけば、残りの財産について分割協議中であっても相続登記手続きを先行して進めることができます。
もちろん、分割協議が滞りなくすべて終了したとしても、複数の名義変更手続きを同時並行で行うためにあえて分割協議書を分けるケースもあります。
他の相続人の心変わりを阻止できる
分割協議が難航しているケースでは、せっかく途中まで決まりかけていたのに、最後の最後で振り出しに戻ってしまう「ちゃぶ台返し」が起こる可能性があります。
どうしても自分が相続したい財産があり、その部分については合意が得られているのであれば、他の相続人が心変わりする前にその財産についての分割協議書を作成してしまった方が良いでしょう。
全財産を第三者に知られずに済む
遺産の名義変更手続きにあたっては、ほとんどの場合、遺産分割協議書の提出が求めらます。
- 不動産の相続登記 → 司法書士・法務局
- 預貯金の名義変更 → 銀行
- 有価証券の名義変更 → 証券会社など
その際、全財産を記載した分割協議書しか作っていないと、提出先での手続きとは直接関係のない財産の存在まで知られてしまうことになります。
すべて見られてもOKという方であれば問題ありませんが、気になる場合には不動産・預貯金・有価証券といった「財産の種類」ごとに、あるいは金融資産について「金融機関」ごとに分けて作っても良いでしょう。
まとめ
なお、分割協議書を複数に分けて作っていた場合でも、分割が最終確定した段階で、全財産の分割内容をまとめた協議書をあらためて作成することに問題はありません。
もちろん、先に作った協議書の内容に抵触しないことが前提ですが。
当初の分割内容と異なる分割協議書を作成した場合、遺産分割のやり直しとみなされ贈与税が課税される恐れがありますので注意しましょう。
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
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