自宅を会社の事務所とする場合の契約形態と節税・その①。賃貸の場合
ポイント:借主を会社名義に変更し役員社宅にできれば、会社経費を増やすことができ節税になる。
こんにちは。税理士の関田です。
ひとり社長が会社を設立する際、まずは自宅兼事務所で、というケースが多いかと思います。
個人事業主の場合、「事業を営む個人」も「プライベートな個人」も同じ『一個人』のため、家事按分(事業供用割合に応じて家賃などを経費化)という概念が生じます。
一方会社を設立した場合、「会社」と「社長個人」はあくまで『別人格』のため、状況はもう少し複雑になります。
自宅の一部を会社の事務所とする場合の契約形態と節税方法について、「①自宅が賃貸の場合」と「②自宅が持家の場合」の2パターンに分けて考えてみましょう。
まず今回は「①自宅が賃貸の場合」のお話です。
目次
借主を社長個人名義のままにする場合
自宅の借主を社長個人名義のままにする場合、社長個人が会社に対して自宅の一部を事務所として賃貸(転貸)することになります。
会社がやるべきこと
会社は社長個人と賃貸借契約を結び、自宅のうち事務所使用部分に相当する家賃を社長個人へ支払います。
たとえば、自宅の家賃が10万円で、事務所使用部分の床面積が20%であれば、
「 10万円 × 20% = 2万円 」
を会社から社長個人に支払います。
会社が支払った家賃は、『地代家賃』として経費になります。
社長個人がやるべきこと
社長個人としては、会社から支払われた家賃は不動産所得の収入となります。
上記の例では2万円が収入となりますが、同額をオーナーに対して支払っているため、不動産所得は
「 2万円 - 2万円 = 0円 」
となり、確定申告は不要です。
借主を会社名義にできる場合(おすすめ)
オーナーの承諾を得られるのであれば、自宅の借主を会社名義に変更し「役員社宅」扱いにした方が、会社経費にできる金額が増えて節税になります。
会社がやるべきこと
会社はオーナーと賃貸借契約を結んで(あるいは既存の契約について、借主を会社名義に変更する覚書等を交わして)借上げ役員社宅とし、会社からオーナーへ家賃を支払います。
会社が支払った家賃は、『地代家賃』として全額経費になります。
一方、会社は社長個人から一定額以上の「社宅家賃」を受け取る必要があります(一定額に満たない部分は社長個人が利益を得ていると考え、給与として課税されてしまいます)。
一般的には、会社がオーナーに支払う家賃の50%を社長個人から受け取っていれば税務上問題ありませんが、土地建物の固定資産税の課税標準額等の情報を入手できれば、さらに社宅家賃の金額を下げることも可能です。
固定資産税の課税標準額については、オーナーに直接聞くという方法もありますが、難しい場合には賃貸借契約書と身分証を持って都税事務所や市町村役場の資産税窓口へ行けば、「借家人」という立場で教えてもらうこともできます。
固定資産税の課税標準額をベースに計算した社宅家賃は、小規模な住宅であれば支払家賃の10~20%程度まで下がるケースもあります(具体的な算式は下記のページを参照)。
なお、社長個人から受け取った家賃は『雑収入』等として収入となります。
社長個人がやるべきこと
社長個人としては、上記により計算した社宅家賃を会社へ支払うだけです。
支払方法は一般的に、給与からの天引きにするケースが多いかと思います。
支払った家賃は単なる自宅の家賃ですので、経費にはなりません。
まとめ
借主が個人名義の自宅では、実際に事務所として使用している部分の家賃だけしか経費にできません。
一方、借主を会社名義にして役員社宅扱いにできれば、事務所使用部分の床面積にかかわらず家賃の半分以上を経費にすることが可能です。
上記の例でいえば、会社が経費にできる金額は、借主が個人名義のケースでは「2万円」だけですが、会社名義に変更して役員社宅にできれば少なくとも「5万円」(半額個人負担の場合)、課税標準額ベースで計算した社宅家賃が仮に1万円であれば「9万円」を会社経費にできます。
もし労力を惜しまなければ、大きな節税効果を得られるということです。
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
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