労働保険料の経理処理。簡単で税務的に問題がない方法

ポイント:概算保険料のうち会社負担分は、申告時または納付時に全額を経費にする。


こんにちは、川越市の税理士・関田です。

労働保険の年度更新の季節がやってきました。

労働保険料には会社負担分と従業員負担分があり、また保険料を概算で納付し1年後に差額を精算するなど複雑な部分が多いため、経理においては正確に処理しようとすると複雑な仕訳が要求されます。

ここでは、比較的簡単で、かつ税務的にもほぼ問題のない処理方法を2パターンご紹介します。

そもそも労働保険とは

労働保険とは、労災保険と雇用保険を総称したものです。

労災保険については、従業員(パート・アルバイト含む)を1人でも雇っている事業所(会社・個人事業主)は原則加入しなければならず、保険料は全額を事業所が負担します。

雇用保険については、雇用保険の適用対象となる従業員(所定労働時間が週20時間以上で、1ヵ月以上継続雇用見込の者)を雇用している事業所が加入しなければならず、保険料は事業所と従業員がそれぞれ一定割合を負担します。

なお、役員や事業主は原則加入できません。

労働保険の年度更新とは

労働保険の保険料は、毎年4/1~3/31までの1年間を単位として計算します。

そして毎年6/1~7/10までの間に、

①その年4/1~翌年3/31までの「概算保険料」の申告・納付

②前年4/1~その年3/31までの「確定保険料」と前年に納付した「概算保険料」との差額の精算

を行います。

この手続きを、労働保険の年度更新といいます。

なお、概算保険料は原則7/10までに全額を納付しますが、40万円以上の場合には3回に分けて納付(7/10、10/31、1/31まで)することもできます。

労働保険料の法人税上の損金算入時期

概算保険料を経費にできるタイミング(損金算入時期)について、法人税基本通達9-3-3では次のように規定されています。

(1)概算保険料

概算保険料の額のうち、被保険者が負担すべき部分の金額は立替金等とし、その他の部分の金額は当該概算保険料に係る同法第15条第1項に規定する申告書を提出した日(カッコ書き略)又はこれを納付した日の属する事業年度の損金の額に算入する。

つまり、概算保険料のうち、従業員が負担すべき雇用保険料を除く会社負担分については

・労働保険の申告書を提出した日(年度更新手続きをした日)

・概算保険料を納付した日

のどちらかの日に損金算入するとされています。

簡単な経理パターン・その① ~税法的に問題がない方法~

以下の方法は、上記の通達に則った処理ですので、税法的には全く問題ありません。

<前提条件>

  • 概算保険料20万円(うち会社負担分:15万円、従業員負担分:5万円
  • 確定保険料24万円(うち会社負担分:18万円、従業員負担分:6万円

概算保険料納付時

(借)法定福利費 150,000 (貸)現預金 200,000
(借)立替金 50,000    

 

給与支給時(毎月)

(借)給与 ××× (貸)現預金 ×××
    (貸)立替金 5,000


確定保険料精算時

(借)法定福利費 30,000 (貸)現預金 40,000
(借)立替金 10,000    

※概算保険料の方が多かった場合には貸借が逆になります

簡単な経理パターン・その② ~やや問題ありだが超簡単な方法~

以下の方法は、費用を一時的に過大計上していることになるためやや問題はあるものの、非常に簡単な経理方法で、実務では小規模な会社でよく採用されています。

<前提条件> ※上記と同じ

  • 概算保険料20万円(うち会社負担分:15万円、従業員負担分:5万円
  • 確定保険料24万円(うち会社負担分:18万円、従業員負担分:6万円

概算保険料納付時

(借)法定福利費 200,000 (貸)現預金 200,000

 

給与支給時(毎月)

(借)給与 ××× (貸)現預金 ×××
(貸)法定福利費 5,000


確定保険料精算時

(借)法定福利費 40,000 (貸)現預金 40,000

※概算保険料の方が多かった場合には貸借が逆になります

この方法では、保険料の納付時に「会社負担分」と「従業員負担分」を分けて考えず、すべて『法定福利費』で処理してしまいます。

毎月の従業員の給与から天引きする分も『法定福利費』のマイナスで処理します。

すべての取引を『法定福利費』一本で処理するため、とても簡単な方法ではあります。

ただし、1点問題があります。

この方法を採用しても最終的には①の方法と損益は一致しますが、通常は確定保険料の精算前に会社の決算を迎えてしまうため、決算時には『法定福利費』が過大計上されていることになります。

要するに、12ヵ月間かけて少しずつ従業員負担分を『法定福利費』からマイナスしていくところ、途中で決算を迎えてしまうと、従業員負担分が『法定福利費』の中に残ったままになってしまうということです。

ただし、1人当たりの従業員負担分の雇用保険料は微々たる金額ではありますので、従業員が数名程度の小規模な会社であれば、この方法を採用していても税務調査で指摘される可能性は低いといえます。

まとめ

①のパターン・②のパターンいずれの場合も、保険料納付時にドカンと費用計上しますので、上場企業のような正確な月次決算にはなりません。

しかし、本当に正確な月次決算を組もうと思うと、上記よりさらに複雑な処理が必要になり手間もかかりますので、中小企業の場合には上記の処理で十分と思われます。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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