未払残業代の支給は給与?それとも賞与?法人税・所得税上の取扱い

ポイント:過去の未払給与の支給とする場合は年末調整のやり直し等が必要だが、賞与の支給とする場合は面倒な手続は不要。法人税上はいずれの場合も支給確定日に損金算入。


こんにちは、川越市の税理士・関田です。

会社が従業員(あるいは元従業員)から過去の残業代の未払分を請求され、支払に応じざるをえなくなるというケースが増えています。

この場合、支払った会社側では税務上どのように処理すべきか、また受け取った従業員側ではどのように課税されるのか、といった疑問が生じます。

今回は、未払残業代の支給があった場合の税務上の取り扱いを、会社側・従業員側の両面から解説します。

未払残業代を支払った会社側の取扱い

過去の給与として支給する場合

未払残業代を残業時間に基づいた過去の給与の未払分として支給する場合、法人税上は支給が確定した年度の損金(経費)となります。

もし過年度分の残業代が含まれていたとしても、過年度分の損金とするために更正の請求を行う必要はありません。

ただし、所得税上は本来受け取るべき年の給与所得となりますので、過年分の残業代が含まれている場合にはその年の年末調整をやり直すことになり、源泉所得税の追加納付・給与支払報告書の再提出が必要となります。

また、4月~6月分の残業代が含まれている場合には社会保険料の標準報酬月額の算定にも影響を及ぼしますので、社会保険料がさかのぼって増額される可能性もあります。

賞与として支給する場合

未払残業代を賞与のように一時金として支給する場合にも、法人税上は支給が確定した年度の損金になります。

この点は、過去の給与の未払分として支給する場合と同様です。

一方、所得税上は受け取った年の給与所得となりますので年末調整のやり直し等は必要なく、賞与としての源泉所得税を(現役の従業員であれば社会保険料も)徴収して納付するだけです。

未払残業代を受け取った個人側の取扱い

過去の給与として受け取る場合

未払残業代を残業時間に基づいた過去の給与の未払分として受給する場合、所得税上は本来受け取るはずだった年の給与所得となります。

過年分の残業代が含まれている場合でも、給与所得のみの方であれば、会社が年末調整のやり直しをしてくれますので特段手続きは必要ありません

ただし、給与以外の所得があったり医療費控除を受けたりするために確定申告していた場合には、再交付された源泉徴収票をもとに確定申告のやり直し(修正申告・更正の請求)を行うことになります。

賞与として受け取る場合

未払残業代を賞与のように一時金として受給する場合、所得税上は受け取った年の給与所得となります。

受け取った未払残業代は受け取った年の年末に交付される源泉徴収票に含まれていますので、給与所得のみの方であれば特段手続きは不要ですし、確定申告する場合にはその源泉徴収票を使って申告するだけです。

遅延損害金の取扱いは?

会社から(元)従業員に対し、未払残業代とともに遅延損害金を支払うケースがあります。

会社側の取扱い

遅延損害金については給与的性格は無いため、会社では源泉徴収は行わず「雑損失」等で処理します。

個人側の取扱い

一方個人側では、遅延損害金は受け取った年の「雑所得」となります。

確定申告を行っていない給与所得者の場合、遅延損害金が20万円以下であれば確定申告は不要です。

ただし、遅延損害金が20万円を超える場合や元々確定申告が必要な場合には、雑所得として申告しなければなりません。

まとめ

最近は未払残業代請求をはじめ労働問題を専門とする弁護士も増え、訴訟の結果、和解金として金銭の授受が行われるケースが増加していますが、名目上は「和解金」となっていても税務上は実態に即した課税が行われることになりますので注意しましょう。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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