士業事務所の社会保険加入について。法改正で被用者保険の適用対象へ

ポイント:現状、税理士などの士業の個人事務所は社会保険加入が任意。法改正により、従業員5人以上の事務所は強制加入となる見込み。


こんにちは。税理士の関田です。

2020年1月10日付の日本経済新聞朝刊に興味深い記事が。

⇒ 日経電子版 『弁護士などの「士業」の個人事業所 厚生年金 適用対象に』

今回の改正が実現することにより、果たして社会保険未加入の”ブラック事務所”は駆逐されるのでしょうか?

士業の個人事務所の社会保険加入は任意

現在、事業所の被用者保険(健康保険・厚生年金)の加入については、

  • 法人事業所 … 強制加入
  • 個人事業所 … 5人以上の従業員がいる場合は強制加入(5人未満の場合は任意)

となっています。

ただし、個人事業所について上記の基準が適用されるのは法律で定められた16業種に限られており、それ以外の業種(非適用業種)については、たとえ従業員が5人以上であっても加入義務はないものとされています。

そして、その「非適用業種」の中には、我々税理士をはじめ、弁護士公認会計士司法書士行政書士社会保険労務士などの”士業”の個人事務所も含まれているのです(社会保険労務士事務所が含まれているのいうのがなんとも…)。

5人以上の士業事務所も強制適用へ

なぜか”士業”が適用対象外とされていることについては以前から疑問の声が多く、厚労省からも見直しの方向性が示されてきました。

⇒ 厚生労働省HP 『被用者保険の適用事業所の範囲の見直し』 2019.11.13

日経の記事によれば、2022年10月からの適用をめざし、改正法案が通常国会に提出されるとのことです。

税理士事務所への影響は?

さて、税理士業界では、中小の事務所を中心に「前近代的な」「丁稚奉公のような」「働き方改革を無視した」職場環境がいまだに多く残っています(いわゆる”ブラック事務所”。税理士だけに限らないと思いますが)。

”ブラック事務所”認定される要件の一つとして、「社会保険未加入」というのも挙げられます。

実際、昔の同僚で「以前に社保未加入の事務所で働いていた」という人が何人かいました。

別に法に違反しているわけではないので、必ずしも「社会保険未加入=悪」とは言い切れないのですが、従業員の福利厚生を考えたら、たとえ事業主の負担が増えたとしても社会保険に加入するのが真っ当な事務所でしょう。

では、今回の改正実現は税理士業界へどのくらいの影響があるのでしょうか?

実はそんなに変わらないのでは?というのが率直な感想だったりします。

というのも、社会保険未加入事務所の大半は、従業員5人以下の小規模な事務所だからです。

所長税理士がいて、従業員が1~2人とパートが1人、みたいな。

これらの事務所は今回の改正の影響を受けません。

逆に、改正の影響を受ける従業員5人以上の事務所については、既に任意で社会保険に加入しているところがほとんどだと思います。

人手不足のご時世、求人で「社会保険完備」を謳っていない事務所に応募するひとはあまりいないでしょうから。

というわけで、結局何が言いたいかというと、これから税理士業界への就職・転職をお考えのみなさん、事務所選びはくれぐれも慎重に。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

当事務所のサービスメニュー・料金について

当事務所では、法人・個人事業主の「税務顧問業務」のほか、相続税申告・贈与税申告・譲渡所得税申告といった「資産税業務」を専門に行っております。
初回のご面談は無料です(単発の税務相談・コンサルティングを除く)。
オンラインでのビデオ面談もお受けしております。