令和2年分からの確定申告。65万円の青色申告特別控除を受けるには?
ポイント:2020年からは65万円の青色申告特別控除額が55万円に減額。ただし、電子申告または電子帳簿保存を行えば引き続き65万円控除を受けられる。
こんにちは。税理士の関田です。
令和元年分の確定申告期間はコロナウイルスの影響でまだ延長中(令和2年4月16日まで)ではありますが、一足先に来年の申告のお話を。
令和2年分からの所得税については、多くの人々に影響の及ぶ改正項目がいくつもあります。
話題の中心は「給与所得控除額の引下げ」や「基礎控除額の引上げ」、「未婚のひとり親控除の創設」などですが、青色申告を行っている個人事業主・フリーランスにとって見逃せないのは「青色申告特別控除額の改正」についてでしょう。
目次
令和2年から青色申告特別控除額は65万円→55万円に
令和元年(2019年)までの取扱い
令和元年までは、青色申告を行っている個人事業主・フリーランスのうち、
- 正規の簿記(複式簿記)による記帳
- 確定申告書に貸借対照表と損益計算書を添付
- 期限内(翌年3/15まで)に申告
という3つの要件をすべて満たす方は、事業所得や不動産所得から最大65万円の青色申告特別控除を受けることができました。
令和2年(2020年)以降の取扱い
ところが、令和2年から、基礎控除が38万円から48万円に増額されたことに伴い、その調整として、正規の簿記による記帳等を行っている場合の青色申告特別控除額が65万円から55万円に減額されることとなりました。
差引するとプラマイゼロですので、税負担が変わるわけではありません。
また、上記の3要件を満たさない場合の10万円の青色申告特別控除については従来どおりです。
電子申告 or 電子帳簿保存を行えば65万円控除を受けられる
ただし、従来の3要件に加え、以下のいずれかの要件を満たす場合には、令和2年以降も引き続き65万円の青色申告特別控除を受けることができることとされています。
- e-Taxにて確定申告書・青色申告決算書を電子申告する
- 電子帳簿保存を行う
このうち「電子帳簿保存」については申請手続きの手間などを考えると個人事業主にとってはややハードルが高いため、65万円控除を受けるためには「e-Taxによる電子申告」がお勧めです。
基礎控除が10万円増額されたうえに65万円控除が維持できるわけですから、電子申告を行うだけで『10万円 ×(所得税率+住民税率)』分の節税効果が生じます。
65万円控除を受けるための電子申告の方法
65万円控除の要件を満たす電子申告の方法には、主に以下の3つがあります。
①マイナンバーカード方式で電子申告
マイナンバーカードとICカードリーダライタを利用して、自宅等のパソコンでe-Taxによる電子申告を行う方式です。
マイナンバーカードを所持していない方はまずカードを作成しなければならないこと、またICカードリーダライタを購入しなければならないことがネックではあります。
ですが、ICカードリーダライタは量販店やネットで2,000円程度で購入できますので、65万円控除を受けることによる節税効果(年間数万円)を考えれば決して高い買い物ではありません。
②ID・パスワード方式で電子申告
マイナンバーカードを持っていない方のために、ID(利用者識別番号)とパスワード(暗証番号)を利用して、自宅等のパソコンでe-Taxによる電子申告を行う方式も用意されています。
IDとパスワードは原則、税務署に出向いて本人確認を行ったうえで発行してもらう必要がありますが、過去に税務署にて確定申告を行った方は既にID・パスワードが発行されている可能性もありますので、前年以前の申告書類の中に「ID・パスワード方式の届出完了通知」がないかどうか確認してみましょう。
⇒ 過去ブログ 『ID・パスワード方式の届出方法。利用者識別番号を取得済み場合は?』
なお、ID・パスワード方式はあくまでマイナンバーカードが普及するまでの暫定措置とされていますのでご注意ください。
③税理士に依頼して電子申告
「ただでさえ確定申告の仕組みがよくわからないのに、自分で電子申告なんてとても無理!」という方はこの際、税理士に申告を頼んでしまうというのも一つです。
税理士の費用はかかりますが、65万円控除で節税できるうえに、面倒な確定申告手続から解放されて本業に集中できるというメリットがあります。
なお、現在は多くの税理士が電子申告を行っているものの、なかには依然として紙ベースの申告を行っている税理士もいますので、念のため依頼する前に確認しておきましょう。
税務署のパソコンで電子申告する場合は?
ご自身で確定申告を行っている個人事業主の方々のなかには、まず紙ベースで申告書・決算書を作成し、税務署の相談会場へ出向いて税務署のパソコンで電子申告を行っている方も少なくありません。
この場合も最終的には電子申告を行うわけですから65万円控除を受けられるのでは?と思われるかもしれませんが、残念ながら令和2年からは55万円控除となってしまいます。
というのも、e-Taxで65万円を受けるには
- 確定申告書
- 青色申告決算書
の両方を電子データで提出しなければならないとされています。
税務署のパソコンでは、確定申告書は電子データで提出できますが、青色申告決算書は電子データで提出することができないため、65万円控除の要件を満たさないというわけです。
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
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