居住用財産の譲渡損失の特例と住宅ローン控除。併用は可能?

ポイント:マイホームを買い換えた場合に売却損が出たときは、旧居の「譲渡損失の損益通算及び繰越控除」と新居の「住宅ローン控除」を併用できる。


こんにちは。税理士の関田です。

これまで居住していた住宅を売却して新たに住宅を購入する場合、旧居の売却益に係る「3,000万円控除」の特例と新居のローンに係る「住宅ローン控除」の併用ができないのはよく知られているところです。

では、旧居で売却損が生じた場合の「譲渡損失の損益通算及び繰越控除」の特例と新居の「住宅ローン控除」の併用は認められるのでしょうか?

マイホームの売却損が出た場合の2つの特例

居住用財産を売却して損失が出た場合に税金計算上の特例が受けられるケースとしては、以下の2パターンがあります。

いずれの場合も、譲渡損失(の一部)をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができ、また控除しきれなかった金額があれば翌年以降3年間繰り越して控除(繰越控除)することも認められています。

①マイホームを買い換えて新たに住宅ローン控除を組んだ場合

1つ目は、

(1)売却年の1月1時点で所有期間5年超の旧居を売却して損失が発生するとともに、

(2)売却年およびその前後1年(計3年)の間に住宅ローンを組んで新居を取得し居住

するパターンです。

このケースでは、新居の方は住宅ローンが必須ですが、旧居では住宅ローンが残っていなくても適用可能です。

⇒ 国税庁HP 『マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例』

②「売却代金<住宅ローン残高」のマイホームを売却した場合

もう1つは、

(1)売却年の1月1時点で所有期間5年超の旧居を売却して損失が発生しており、

(2)かつ売却代金が住宅ローン残高を下回る(売却代金で住宅ローンを返済しきれない)

というパターンです。

こちらのケースでは、新居の取得は要件となっていませんので売却後に賃貸住宅に居住する場合でも適用可能です。

また、譲渡損失の金額がまるまる損益通算の対象となるわけではなく、「住宅ローンの残債から売却代金を差し引いた金額」が損益通算の限度額となります。

⇒ 国税庁HP 『特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例』

譲渡損失の特例と住宅ローン控除の併用の可否

上記のとおり、パターン①では新居で住宅ローンを組んでいることが条件となっていますが、「買換えの場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」と「住宅ローン控除」は併用が可能とされています。

ただし、損益通算及び繰越控除により所得税が発生しない年については住宅ローン控除額も当然ながらゼロとなります。

住宅ローン控除の期間は「入居年」からカウントが始まりますので、繰越控除が生じるほどの多額の売却損が出た場合には住宅ローン控除の期間が”事実上”短くなってしまう点にご留意ください。

まとめ

居住用財産を売却した場合、3,000万円控除(売却益)と住宅ローン控除の併用はできませんが、損益通算・繰越控除(売却損)と住宅ローン控除の併用は可能です。

買換えで売却損が出たときは、両方の適用を忘れないようにしましょう。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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