共有不動産の譲渡費用を1人が全額負担。譲渡所得の計算方法は?

ポイント:共有不動産の譲渡所得は各共有者が持分で按分して申告するのが原則。譲渡費用も持分に応じて負担しないと贈与税が課税される場合も。


こんにちは。税理士の関田です。

共有不動産を売却する場合、代表者1名が手続き及びお金の入出金管理を行い、後日他の共有者に分配を行うのが一般的かと思います。

その際、きちんと持分に応じて分ければ問題ないのですが、適当に分けてしまうと譲渡所得税だけでなく贈与税まで課税されてしまう恐れがあります。

今回は、共有不動産の譲渡費用を1人が単独で負担した場合の課税問題を考えてみましょう。

譲渡所得の計算方法

まずは基本となる譲渡所得計算のおさらいから。

譲渡所得は、「譲渡収入」から「取得費」と「譲渡費用」を控除して計算します。

譲渡所得 = 譲渡収入(※1) - 取得費(※2) - 譲渡費用(※3)

※1 譲渡収入 ・・・ 売却代金、固定資産税精算金

※2 取得費  ・・・ 当初購入代金(建物は減価償却費控除後)など

※3 譲渡費用 ・・・ 仲介手数料、印紙代、測量代、建物解体費用など

共有不動産の場合は?

譲渡した不動産が複数人の共有名義だった場合、譲渡収入はもちろん、取得費・譲渡費用も各人の共有持分の割合に応じて按分して申告します。

<事例> 2名で共有の不動産(A:2/3、B:1/3)を売却した場合

  • 譲渡収入:3,000万円
  • 取得費:1,500万円
  • 譲渡費用:600万円

A(2/3)の譲渡所得 : 2,000万円 - 1,000万円 - 400万円 = 600万円

B(1/3)の譲渡所得 : 1,000万円 - 500万円 - 200万円 = 300万円

上記の事例の場合、売却後の手取額2,400万円(譲渡収入3,000万円-譲渡費用600万円)については持分に応じてAに1,600万円(2,400万円×2/3)、Bに800万円(2,400万円×1/3)を分配することになります。

共有者の1人が譲渡費用を全額負担したら?

申告上はあくまで持分で按分

しかし、実際には手取額を各人の持分どおりに分配しないこともあるようです。

たとえば、売却代金は持分どおりに分配したものの、譲渡費用については共有者の1人が全額負担してしまったようなケースです。

この場合、譲渡所得の申告上も実際に譲渡費用を負担した人が全額控除して良さそうに思われますが、正解はあくまで「実際の負担割合に関わらず各人の持分で按分した金額を控除」です(つまり、実際には譲渡費用を負担していない人でも持分に応じた金額を控除できるということ)。

これは民法上、共有物に関する費用はその持分に応じて負担することとされているためです。

贈与税の課税に注意

上記の理由から、譲渡費用を共有者の1人が全額負担した場合、負担者から他の共有者に対する求償権(返還を求める権利)が発生します。

たとえば、先の事例でAが600万円を全額負担した場合、AはBに対して、本来Bが負担すべき200万円(600万円×1/3)の求償権を有することになります。

そして、もしAがBに対する求償権を放棄した場合、BはAから200万円の贈与を受けたものとして贈与税の課税対象とされてしまうのです。

まとめ

共有不動産を売却した場合には、譲渡費用も考慮した”手取額”を持分に応じて分けるのが鉄則です。

贈与税には110万円の基礎控除がありますので、実際には放棄した求償権が110万円以内であれば課税はされませんが、譲渡費用が高額になる場合は特に注意しましょう。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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