自宅を会社の事務所とする場合の契約形態と節税・その②。持家の場合
ポイント:自宅の建物を会社に売却し役員社宅にすれば、会社経費を増やすことができ節税になる。
こんにちは。税理士の関田です。
前回は、「賃貸」の自宅の一部を会社の事務所とする場合の取扱いを解説しました。
⇒ 前回ブログ 『自宅を会社の事務所とする場合の契約形態と節税・その①。賃貸の場合』
今回は「②自宅が持ち家の場合」のお話です。
目次
自宅を社長個人名義のままにする場合
自宅の名義を社長個人のままにする場合、社長個人が会社に対して自宅の一部を事務所として賃貸することになります。
会社がやるべきこと
会社は社長個人と賃貸借契約を結び、自宅のうち事務所使用部分に相当する家賃を社長個人へ支払います。
家賃の金額は、近隣の相場や事務所使用部分の床面積等を勘案して設定することになり、極端に高すぎても低すぎてもいけません。
支払った家賃は、『地代家賃』として経費になります。
社長個人がやるべきこと
社長個人としては、会社から支払われた家賃は不動産所得の収入となりますので、毎年確定申告が必要です。
必要経費としては、建物の減価償却費や固定資産税、火災保険料、修繕費などのうち「会社に貸している部分に相当する金額」が計上できます。
ただし、住宅ローンが残っている場合には注意が必要です。
住宅ローン金利のうち、賃貸部分の床面積に対応する金額は「不動産所得の必要経費」にできますが、「住宅ローン控除額」は減る(居住部分の割合しか控除対象にならない)ことになります。
また、賃貸部分の床面積が50%を超える場合には、そもそも住宅ローン控除を適用できないこととなっています。
なお、賃貸部分の床面積が10%以下であれば、住宅ローン控除の計算上は100%居住用扱いとなり、賃貸部分の必要経費を計上したうえで、さらに住宅ローン控除を満額受けることが可能です。
自宅を会社に売却して会社名義にする場合
自宅を社長個人から会社に売却し「役員社宅」扱いにすると、会社経費にできる金額が増えて節税になります。
会社がやるべきこと
会社は社長個人から自宅を買い取り、役員社宅として社長個人に賃貸します。
その際、買い取るのは建物のみとし、土地は個人所有のままとします(土地に含み益がある場合、社長個人に多額の譲渡所得税がかかるため)。
売買価格は建物の時価とすべきですが、一般的には帳簿価額(未償却残高)を時価とみなして売買を行います。
税務署へは「土地の無償返還に関する届出書」を提出し、会社から社長個人へ固定資産税の3倍程度の地代を支払います(使用貸借とすることも可)。
逆に社長個人からは社宅家賃を受け取りますが、家賃設定は自宅の固定資産税の課税標準額等をベースに、下記のページに記載されている計算式で算出します。
会社としては、建物の減価償却費や固定資産税、火災保険料、修繕費などのほか、社長個人に支払う地代を経費にすることが可能です。
一方、社長個人から受け取った家賃は『雑収入』等として収入となります。
社長個人がやるべきこと
社長個人としては、まず建物を会社に売却した際に譲渡所得の申告が必要です。
ただし、帳簿価額(未償却残高)での売買であれば、収入と取得費が同額のため譲渡所得はゼロとなり、所得税はかかりません。
また、会社から支払われた地代は不動産所得の収入となりますので、毎年確定申告が必要です。
必要経費としては、土地の固定資産税を計上できます。
一方、会社に対しては社宅家賃を支払うことになりますが、こちらは単なる自宅の家賃ですので、経費にはなりません。
まとめ
自宅が持ち家の場合、会社所有にしたほうが会社経費にできる金額が多く節税になるケースが多いと思われますが、売買の際のコスト(登記費用や不動産取得税)も考慮する必要があるほか、将来的に自宅を手放す予定があるかどうかも重要なポイントになります。
もし会社への売却をお考えの場合には、専門家にご相談の上、慎重に検討されることをお勧めします。
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
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