倒産防止共済は年払い制度がない?2年目以降も前納手続きを忘れずに
ポイント:倒産防止共済は加入時に掛金の前納手続きをしても、翌年から自動的に「月払い」になる。翌年以降も「年払い」したい場合には、毎年前納の手続きが必要。
こんにちは。税理士の関田です。
主に中小企業が行う決算対策(節税対策)の一つとして、中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)への加入があります。
掛金が全額損金(経費)になり節税効果が高いことから、決算直前に駆け込みで加入し1年分の掛金を前納するケースが多いかと思いますが、倒産防止共済には掛金の「年払い」という制度がありませんので、前納した翌年は注意が必要です。
目次
中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)とは
本来は連鎖倒産を防ぐための制度
中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)とは、万が一取引先が倒産した場合の連鎖倒産等を防ぐための制度で、独立行政法人・中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」)が運営しています。
取引先が倒産し、売掛金などの回収が困難になった場合に、無担保・無保証・無利子で掛金総額の10倍まで(最高8,000万円)の借入をすることが可能です。
節税目的で加入するケースも多い
共済制度の本来の趣旨は上記のとおりですが、
- 掛金を、法人であれば全額損金に、個人事業主であれば全額必要経費にできる
- 40ヵ月以上納めていれば、解約した場合でも掛金が100%戻ってくる
ことから、主に法人の決算対策(節税対策)として利用されるケースが多いかと思われます。
掛金は月20万円まで、総額800万円が上限
掛金は月額5,000円~200,000円の範囲内で自由に設定できます(5,000円単位)。
ただし、掛金の積立限度額は800万円ですので、もし月額20万円で加入した場合には、加入から40ヵ月(3年4ヵ月)で上限に達し、それ以降は掛金を納付することができません(契約は継続)。
決算対策で加入する場合の前納の方法
決算に向けた節税対策として倒産防止共済に加入する場合には掛金の前納を行いますが、加入時の前納掛金の支払方法は2種類あります。
初回の口座振替時に前納する方法(時間的余裕がある場合)
決算まで2ヵ月以上ある場合には、掛金の初回口座振替時に前納する方法を選択すれば決算に間に合います。
初回口座振替は加入申込月の2ヶ月後ですが、もし前納を希望した場合には、
- 申込月分
- 申込月の翌月分
- 申込月の翌々月分(初回振替月分)以降、前納を希望した月分
の掛金がまとめて引き落とされます。
<具体例>
9月決算の会社で、7月に加入申込を行い、1年分の前納を希望した場合
↓ 9月の初回口座振替時に引き落とされる掛金は…
7月分、8月分、9月分~翌年8月分の計「14ヵ月分」となる
なお、書類の不備などにより初回口座振替月が1ヵ月程度遅れることもあり、場合によっては引落が決算に間に合わなくなる可能性もありますので、余裕をもって手続きされることをお勧めします。
振込により前納する方法(時間的余裕がない場合)
決算まで2ヵ月を切っている場合には、掛金の振込による前納を選択し、加入申込をした月内に掛金を振り込む必要があります。
<具体例>
9月決算の会社で、9月に加入申込を行い、1年分の前納を希望した場合
↓ 9月末までに振り込む掛金は…
9月分~翌年8月分の計「12ヵ月分」となる
掛金を年払いしたい場合は毎年手続きが必要
倒産防止共済には「年払い」という制度が存在しない
倒産防止共済には掛金の「年払」という制度がありません。
掛金を「前納」することは可能ですが、自動的に毎年「年払い」できるわけではないのです。
同じ中小機構が運営する『小規模企業共済』では掛金の「半年払い」や「年払い」を選択することもできますが、倒産防止共済では「月払い」が原則です。
したがって、加入申込時に1年分の掛金の前納を選択していたとしても、その後何もしなければ1年後には自動的に「月払い」が開始されます(前記の例では、翌年9月から月払いがスタート)。
「年払い」したい場合はその都度「前納」の手続きを行う
翌年以降も年払いを続けたい場合には、毎年、前納を希望する月の5日までに中小機構へ届くように「掛金前納申出書」を加入窓口(委託団体や代理店)に提出しなければなりません。
提出後、加入窓口から中小機構へ書類が届くまでの時間を考えると、遅くとも前納希望月の前月末までには加入窓口へ提出する必要があると思われます(加入窓口へご確認ください)。
前記の例でいえば、翌年9月に再び前納を行うためには、翌年8月末頃までには前納手続が必要です。
まとめ
加入2年目以降の前納手続きは、税理士も顧問先もつい忘れがちです。
「前期より業績が落ちておりもう少し利益を出したい」「赤字になりそう」といった場合は、そのまま月払いに移行しても問題ありませんが、「今期もなるべく節税したい」という場合には、忘れずに前納手続きを行うようにしましょう。
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
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