法定相続情報が相続税申告でも利用可能に。戸籍謄本の添付は不要
ポイント:戸籍謄本等の代わりに「法定相続情報一覧図の写し」を相続税申告書に添付することが可能に。今まで通り戸籍謄本等を添付する場合は原本でなくコピーでも可。
こんにちは。税理士の関田です。
これまで相続税の申告にあたっては、被相続人(亡くなった方)のすべての相続人を明らかにするため、被相続人の出生から死亡時までの連続した戸籍謄本・除籍謄本や相続人の戸籍謄本(以下「戸除籍謄本一式」といいます)を添付する必要がありました。
しかし、平成30年4月1日以降に提出する申告書については、戸除籍謄本一式の代わりに「法定相続情報一覧図の写し」を添付することも可能になりました。
法定相続情報証明制度とは
相続が発生すると、被相続人名義の預金の解約・名義変更や不動産の名義変更など、様々な手続きが必要になります。
以前はこれらの手続きを行うため、戸除籍謄本一式を各金融機関や法務局へ持って回らなければなりませんでした。
そこでこのような手間を省くため、法務局が戸籍に基づいて、被相続人の相続関係を明らかにする証明書を発行してくれるようになりました。
これが平成29年5月にスタートした『法定相続情報証明制度』です。
相続人代表者などが、被相続人の相続関係を一枚の図(法定相続情報一覧図)にまとめ、戸除籍謄本一式とともに法務局へ提出すると、法務局がその一覧図に認証文を付けた写しを交付してくれます。
この制度を利用することで、名義変更等の手続きの際は「法定相続情報一覧図の写し」だけを提出すれば済むこととなり、戸除籍謄本一式を金融機関等へ何度も出し直す必要がなくなります。
法定相続情報一覧図を作成するメリット
相続人の費用負担の軽減
被相続人が複数の金融機関に口座を持っていた場合、同時並行で解約・名義変更手続きを進めるためには、戸除籍謄本一式が何セットも必要になります。
どの自治体も戸籍謄本取得には1通あたり450円程度、除籍謄本取得には1通あたり750円程度かかるため、一式取得するのに少なくとも数千円はかかります。
これを何セットも用意すると数万円の出費となってしまいます。
その点、「法定相続情報一覧図の写し」は何通とっても無料ですので、最初に戸除籍謄本一式を準備すれば、それ以外の費用は基本かかりません。
手続きのスピードアップ
以前は戸除籍謄本一式を揃えるコストを抑えるため、同じセットを「A銀行→B銀行→C銀行→D証券」と使い回すことが多かったと思います。
そのため、すべての手続きが終わるまでにはかなりの時間を要しました。
「法定相続情報一覧図の写し」は必要であれば何通でも交付を受けることができますので、複数の金融機関等の手続きを同時並行で行うことが可能となり、手続きにかかる時間が大幅に短縮されます。
相続税申告書の添付書類としても利用可能に
法定相続情報証明制度がスタートした当初、「法定相続情報一覧図の写し」を相続税申告書の添付書類として利用することはできませんでした。
以前の一覧図では、被相続人の子は実子・養子にかかわらず「子」と記載されており、実子・養子の区別が必要な相続税申告には適していなかったからです。
しかし、平成30年4月1日より制度の取扱いが変わり、一覧図に記載する続柄は、原則として戸籍に記載されている続柄(「長男」「二女」「養子」など)を記載することになりました。
これに伴い、「法定相続情報一覧図の写し」を相続税申告書の添付書類とすることが可能となりました。
平成30年4月1日以降に提出する相続税申告書には、
① 戸除籍謄本一式
② 法定相続情報一覧図の写し(子の続柄が実子か養子のいずれかわかるように記載)
③ ①又は②のコピー
のいずれかを添付すればよいこととされました。
ところで、これまで原則として戸籍関係の書類は「原本」の提出が求められていましたが、平成30年4月1日からは「コピー」でもOKとなりました。
ダメと分かっていながらコピーの提出で済ませていた税理士事務所も少なくなかったかと思いますが、正式にコピーの提出が認められたことになります。
ちなみに、「法定相続情報一覧図の写し」を添付書類とする場合で、被相続人に養子いるときは、養子の戸籍謄本(これもコピーで可)の添付も必要になります。
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
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