2022年を振り返る。税理士業界10大ニュース
こんにちは。税理士の関田です。
今年最後の更新なので、いつものように「業界十大ニュース」で締めくくりたいと思います。
毎年10個のネタ探しに困るこの企画ですが、今年はなかなかの豊作イヤー。
独断と偏見で選んだニュースを時系列で振り返ってみましょう。
目次
2022年・税理士業界10大ニュース
改正電子帳簿保存法がスタート
1月、改正電子帳簿保存法がスタートしました。
特に影響の大きかった「電子取引データ保存義務化」ですが、昨年末の税制改正大綱にて土壇場で2年間の猶予が認められましたので、対応が遅れていた(そもそも対応する気がなかった)多くの中小企業は穏やかな正月を迎えたはずです。
で、年末の税制改正大綱ではさらなる改正が入りましたね。
中小企業の経理の実態を知らない人間が法律を作るからこういうことになるんです。
事業復活支援金の創設
1月、新型コロナウイルスの影響を受けた事業者向けに新たな支援金が創設されました。
「持続化給付金」→「一時支援金」→「月次支援金」ときて、今度は「事業復活支援金」。
さすがにこれで終わりだと思いますけど、次なる支援金名で大喜利できそうですね。
freeeの楽天銀行口座明細の自動取り込みが停止に
2月、freeeが楽天銀行とのAPI連携終了が発表され、業界に衝撃が走りました。
両社間に何があったのかは分かりませんが、同期できなくなったのは銀行の方だけで、楽天カード明細はこれまでどおり同期可。
マネーフォワードと楽天銀行の関係には変化がないだけに、謎が深まります。
総則6項裁判で納税者敗訴
4月、相続開始直前に銀行借入で取得したマンションの相続税評価を巡る裁判で、通達評価の正当性を主張してきた納税者の上告が最高裁で棄却されました。
画期的な判決を期待していた人達はみな意気消沈。
6項発動の基準もはっきりせずに終わってしまい、今後はこれまで以上に「伝家の宝刀」にビビりながら実務にあたらなければならなくなりました。
競馬芸人じゃい氏が国税に審査請求
6月、お笑いトリオ・インスタントジョンソンのじゃい氏が過去の馬券の払戻しについて税務調査を受け、国税不服審判所へ審査請求を行ったことを公表しました。
これまで払戻金を「雑所得」として申告していたものの、調査で「一時所得」と判断され数千万円の追徴金を支払ったのだとか。
このニュースを見たときに思ったのは、「雑所得でもちゃんと申告していて偉いじゃないか」ということ。
馬券を生業にしている競馬マスコミ・予想家は一体どんな確定申告をしているのか気になるところです(すべての払戻金をマジメに申告しているとは思えないのですが)。
審査請求で覆る可能性は残念ながら低いと思いますが、トータルで損している(=担税力がない)場合ですら納税が発生してしまう現行税制に欠陥があるわけで、約10%のテラ銭が国庫に入っていることを考えてもそろそろ課税方法の見直しを真剣に検討すべきでは?
「外れ馬券代を経費に」というとあたかも脱税しようとしているかのような誤解をされそうですが、普段馬券をやらない人には分かりにくい話なんでしょうね。。
節税目的の保険は審査段階で封じ込めへ
7月、金融庁は節税目的の保険商品への対応で国税庁との連携を強化する方針を発表しました。
保険商品の審査段階で、金融庁から保険会社に対して税務上の見解を国税庁に事前照会するよう慫慂するほか、今後は金融庁から国税庁に直接事前照会することもあるのだとか。
まあこれで過度な節税保険は世に出てこなくなるわけですね、どんどんやってください。
ダイキンが工業会証明書を誤発行
8月、空調設備メーカー大手・ダイキン工業の一部設備について、中小企業向けの特例税制の要件を満たさないにも関わらず、誤って「工業会等による証明書」が発行されていたことが発覚しました。
該当する事業者は平成26年以降で約1,500社。
もちろん特例は受けられないため適用してしまった事業者は修正申告となりますが、追徴額はどこまでダイキンが補償してくれたんですかね?
副業の「事業所得」or「雑所得」問題
8月、国税庁は会社員の300万円以下の副業収入を「雑所得」とする通達改正案を公表しました。
副業の赤字を「事業所得」として「給与所得」と損益通算する節税策に歯止めをかけるのが目的でしたが、普段はほとんど集まらないパブリックコメントに反対意見が殺到。
結局10月には、「帳簿あり→(概ね)事業所得」「帳簿なし→雑所得」とする修正案が示されました。
もっとも、帳簿があっても事業といえるレベルの活動でなければ「雑所得」と判定されることは変わりありませんので、修正案に喜んでいるであろう損益通算村の方々は覚悟しておいた方が良いでしょう。
生前贈与加算期間の延長が決定
12月、ここ数年噂されてきた「相続税・贈与税の一体化」に向けた改正が年末の大綱でいよいよ現実のものとなりました。
生前贈与の加算期間は結局、相続開始前「7年間」で決着(令和6年以降の暦年贈与から)。
当初は「10年」とも噂されていたので、落ち着くべきところに落ち着いた感じですかね(でもやっぱり長いな~7年って)。
むしろ、相続時精算課税贈与にも毎年110万円の控除が設けられて、しかもどうやら7年内の加算がない(らしい)というのが驚き。
なんか騙されているような気すらしますが、ひとまず改正法案が出るのを待ちましょう。
インボイス制度問題が徐々に話題に
そしていよいよスタートまで1年を切った今年、インボイス制度がじわじわと世間で話題になり始めました(という気がするのですが、この業界にいるからそう思うだけ?)。
「新語・流行語大賞」にもノミネートされてましたけど、1年早かったんじゃないですかね。
来年だったらトップテン入りできていたかもしれません。
年末の税制改正大綱で免税事業者などを対象とした新たな経過措置が設けられて、もう始まる前からグダグダの様相を呈してきていますが、果たして来年10月にはどんな世界が広がっているのでしょうか。
まとめ
というわけで、駆け足ながら2022年を振り返りました。
個人的には、本厄だった1年を(ごく小さな災いは何度か降りかかりましたが)無事に乗り切れそうで良かったです。
では皆さま、良いお年を。
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
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