生前の保険契約者変更による課税関係。建更は変更時に贈与税?

ポイント:JA建物更生共済の契約者を生前に変更した場合は、変更時点で旧契約者から新契約者に解約返戻金相当額の贈与があったものとして贈与税が課税される。


こんにちは。税理士の関田です。

生前に生命保険の契約者を変更した場合の税金上の取扱いは国税庁のホームページにも載っているのでよく知られているところですが、JAの建物更生共済(建更)の契約者を変更した場合の課税については盲点になっているような気がします。

建物の名義変更にあわせて建更の名義も変更したいときは注意しましょう。

生命保険の契約者を変更した場合

生命保険の契約者変更を行ったとしても、変更時点で新契約者に贈与税が課税されることはありません

生命保険については、契約者変更後、被保険者の死亡や満期・解約により保険金等が支払われた時点(=出口)で、「保険料負担者」と「保険金受取人」との関係に応じた課税が発生します。

<死亡保険金に対する課税>

①保険料負担者 = 被保険者 → 相続税

②保険料負担者 = 保険金受取人 → 所得税(一時所得)

③保険料負担者 ≠ 被保険者・保険金受取人 → 贈与税

<満期保険金・解約返戻金に対する課税>

①保険料負担者 = 保険金受取人 → 所得税(一時所得)

②保険料負担者 ≠ 保険金受取人 → 贈与税

なお、保険料負担者が複数人いる場合には、その負担割合に応じて複数の税金がかかることになります。

⇒ 国税庁HP 『生命保険契約について契約者変更があった場合』

建物更生共済の契約者を変更した場合

上記のうち「保険料負担者」と「保険金受取人」が異なるケースにおいて、保険金受取時に贈与があったものとみなして贈与税を課税することとしているのは相続税法第5条(みなし贈与)であり、この規定は「人の死亡」の保障を目的とした保険契約を前提としています。

一方、JA(農協)の建物更生共済(建更)は建物や動産など「物の損害」の保障を目的としており、相続税法第5条の規定の対象からは外れています。

つまり、建更は”出口”でのみなし贈与課税の対象に含まれないため、契約者変更時点で新契約者に「経済的利益」が移転したものとして贈与税が課税されることになります。

なお、贈与税の課税対象となる「経済的利益」とは、契約者変更時における建更の解約返戻金相当額です。

もしも贈与税の課税を回避したい場合には、新契約者から旧契約者に対して解約返戻金相当額を支払う(=契約を買い取る)必要があるでしょう。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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