中古車の売買時は注意。リサイクル預託金の経理処理と消費税の取扱い

ポイント:自動車を売買する際は常にリサイクル預託金の譲渡が発生。消費税上、中古車の売買時は「金銭債権の譲渡」として非課税取引(有価証券譲渡)となるため注意。


こんにちは。税理士の関田です。

会社が自動車を所有している場合、本来は所有台数分のリサイクル預託金が貸借対照表上に載っているはずです。

ところが、あるべき預託金が載っていなかったり、あるいは既に所有していない車の預託金が残っていたりするケースは結構ありがちです。

リサイクル預託金の正しい会計処理を整理しておきましょう。

新車購入時の処理

新車を購入した際、販売店から受け取る注文書や見積書には、リサイクル関連費用について以下のような明細が載っているはずです。

リサイクル預託金
シュレッダーダスト料金 7,320円
エアバッグ類料金 2,280円
フロン類料金 2,030円
情報管理料金 130円
小 計 11,760円
資金管理料金(消費税込) 290円
合 計 12,050円

※金額はあくまで一例です。

上記のうち、購入時点で経費にできるのは資金管理料金のみであり、消費税上も「課税仕入」となります。

一方、リサイクル預託金は廃車時に要する費用を前払いしているに過ぎないため、購入時点ではいったん資産計上しなければならず、消費税上は「不課税」取引扱いです。

借 方 貸 方
車両運搬具 ×××円 現預金 ×××円
     
車両費(課税仕入) 290円    
リサイクル預託金(不課税) 11,760円    

ちなみに、リサイクル預託金は「自動車リサイクル促進センター」という資金管理法人へ預託されており、廃車になるまではこのセンターで管理・運用されています。

売却・下取時の処理

自動車を売却もしくは下取りに出したときは、自動車とセットでリサイクル券(預託金)も譲渡することになります。

このとき、売却価格・下取価格の明細にリサイクル預託金が明記されていれば問題ないのですが、単に「下取価格 ×××円」としか記載されていないようなケースもあります。

このような場合、「下取価格 ×××円」の中にはリサイクル預託金相当額の代金も含まれていると考えます。

たとえば、リサイクル預託金額が11,760円の車両を300,000円で下取りに出したとしたら、

  • 車両本体の下取価格 … 300,000円 - 11,760円 = 288,240円
  • リサイクル預託金の譲渡代金 … 11,760円

として処理しなければなりません。

もしここでリサイクル預託金の譲渡処理を忘れると、既に存在していない車両の預託金が帳簿に延々と残ってしまいますので気を付けましょう。

また、このリサイクル預託金の譲渡は「金銭債権の譲渡」にあたるため、消費税上、非課税売上(有価証券の譲渡)として処理しなければなりません。

通常の非課税売上とは異なり、対価の5%のみを課税売上割合の分母に反映しますので注意が必要です。

借 方 貸 方
現預金 ×××円 車両運搬具 ×××円
    固定資産売却益 ×××円
    リサイクル預託金(非課税売上) 11,760円

※課税売上割合計算上の分母に算入されるのは「11,760円×5%=588円」のみ。

中古車の購入時の処理

一番間違いやすいのがここです。

中古車を購入する際には、売主からリサイクル券(預託金)を譲り受けることになります。

きちんとした自動車販売業者からの購入であれば注文書などにリサイクル預託金の明細が載っていますが、それ以外の売主から購入で「車両売却代金 ×××円」といった領収書しかないような場合には、気を付けないとリサイクル預託金の処理を失念します。

上記のようなケースでも、リサイクル預託金は現所有者に引き継がれていますので、「車両売却代金 ×××円」の中にはリサイクル預託金相当額の代金も含まれていると考えなければなりません(考え方は売却・下取のケースと一緒です)。

ここで、「そもそもリサイクル預託金がいくらなのか分からないんですけど?」と思われるかもしれませんが、実は簡単に調べることができます。

自動車リサイクルシステムのHPで車台番号や登録番号を入力するとその車のリサイクル料金を検索することができますので、手元にリサイクル券がなく預託金額が分からない場合は活用してみましょう。

なお、消費税上は「金銭債権の譲渡」にあたるため非課税仕入で処理します(不課税取引で処理しても税額に影響はありませんが)。

借 方 貸 方
車両運搬具 ×××円 現預金 ×××円
     
リサイクル預託金(非課税仕入) 11,760円    

廃車時の処理

リサイクル預託金は、廃車とする車両を引取業者に引き渡した時点で経費となります。

消費税上も、ここでようやく課税仕入として処理されます。

借 方 貸 方
固定資産除却損 ×××円 車両運搬具 ×××円
車両費(課税仕入) 11,760円 リサイクル預託金 11,760円

まとめ

リサイクル預託金は金額が小さいため、もし処理を間違えたとしても税額に与える影響は微々たるものではありますが、なるべく正しい処理を心掛けたいものです。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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