土地の共有物分割と税金。所得税・不動産取得税・登録免許税の取扱い
ポイント:共有の土地を持分に応じて分割した場合、譲渡はなかったものとされるため確定申告は不要。また、不動産取得税は非課税、登録免許税は0.4%に軽減される。
こんにちは。税理士の関田です。
不動産が共有状態にあると、いざという時に全員の承諾が得られなければ売却できなかったり、共有名義人の相続でさらに権利関係が複雑化したりするなど、様々なデメリットが生じる可能性があります。
親子間の共有であれば親の相続の際に単独名義にすることも可能ですが、兄弟間や親戚間の共有の場合は早めに解決策を探っておきたいところです。
今回は、土地の共有状態を解消するための手法の一つ、「共有物分割」にまつわる税金上の取扱いについて解説します。
共有物分割とは?
共有物分割とは、2人以上で共有している不動産などについて、その共有状態を解消するための手続きのことをいいます。
共有物分割には「現物分割」「代金分割」「価格賠償」という3つの手法がありますが、これからご説明するのは共有状態の土地を「現物分割」した場合の取扱いです。
共有土地の現物分割とは、たとえば2人で共有している1つの土地について、「共有持分の比率」と「土地面積の比率」が等しくなるよう分筆を行い、分筆後の土地をそれぞれ単独名義で所有することです。
<共有物分割(現物分割)のイメージ>
A:2/3 B:1/3 300㎡
↓ 分割
A:100% 200㎡
B:100% 100㎡
所得税の取扱い
所得税基本通達33-1の6では、共有物分割について次の通り規定しています。
所得税基本通達33-1の6(共有物の分割)
個人が他の者と土地を共有している場合において、その共有に係る一の土地についてその持分に応ずる現物分割があったときには、その分割による土地の譲渡はなかったものとして取り扱う。
共有の土地をそれぞれの持分に応じて分割することは、共有持分の交換(=譲渡)と考えられなくもありません。
先の例でいえば、共有の土地を200㎡と100㎡に分割したうえで、「Aが所有する100㎡部分の持分2/3」と「Bが所有する200㎡部分の持分1/3」を交換したともいえるわけです。
しかしながら、実態としては1つの土地に及んでいた共有持分権がその土地の一部に集約されただけにすぎず、このことだけをもって譲渡所得が生じたと考え所得税を課税することには無理があると考えられます。
そこで、上記通達において、共有の土地をその持分に応じて現物分割した場合には譲渡所得としての課税は行わない旨が定められています。
なお、所得税上はそもそも「土地の譲渡はなかった」ものとして取り扱われます(特例により非課税となるわけではない)ので、確定申告も不要となります。
不動産取得税の取扱い
不動産取得税とは、文字通り、不動産を取得した場合に課税される税金です。
そして、共有不動産の分割については、共有持分の交換による取得があったという考え方もできることは前述のとおりです。
しかしながら、地方税法においては、共有物の分割が共有者の持分割合の範囲内であれば、その分割による不動産の取得についてはあくまで「形式的な所有権の移転」にすぎないものとされ、不動産取得税は非課税としています。
登録免許税の取扱い
土地の所有権移転登記については、原則として、土地の価額(固定資産税評価額)の「2%」の登録免許税が課税されます(売買の場合は軽減税率あり)。
ただし、共有物分割を原因とする所有権移転登記の場合は「0.4%」に軽減されています。
まとめ
よくいわれることですが、不動産の共有は、相続により世代が交代すると共有者同士の関係も希薄になる(いとこ同士、はとこ同士の共有など…)ため、後々面倒なことになります。
もちろん相続の際、兄弟姉妹間での安易な共有を避けることが重要ではありますが、もしすでに共有となっている不動産がある場合には、次の世代に負担をかけないためにも、共有物分割や売買、第三者への売却などにより早めに共有状態を解消しておくことが必要でしょう。
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
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