土地の固定資産税・都市計画税の計算方法。住宅用地特例と負担調整措置
ポイント:住宅用地の固定資産税等は軽減措置あり。また負担調整措置により、評価額は変わらなくても税額は毎年変わる可能性がある。
こんにちは。税理士の関田です。
今年度の固定資産税・都市計画税の納税通知書も、そろそろ全ての自治体でお手元に届いているかと思います。
今年は3年に1度の評価替えの年です。
あらためて土地の固定資産税の計算の仕組みをおさらいしてみたいと思います。
目次
基本的な計算式
土地の固定資産税・都市計画税は、
「課税標準額 × 税率」
で計算されます。
ただしこの「課税標準額」の算出方法がクセモノです。
「固定資産税評価額」→「本則課税標準額」→「課税標準額」という順番で計算していきます。
ベースとなるのは固定資産税評価額
課税標準額の計算のベースとなるのは「固定資産税評価額」です。
納税通知書(課税明細書)には『評価額』や『固定資産税評価額』という名目で記載されています。
固定資産税評価額は、固定資産税路線価をベースに、土地の形状に応じた補正率と地積を乗じて計算されます。
固定資産税路線価は公示価格の70%程度になるように設定されていますので、相続税の路線価(公示価格の80%程度)と比べると1割ほど低い金額になります。
固定資産税路線価は自治体のHPで公表されている場合もありますが、以下のサイトでは全国の固定資産税路線価を調べることができます。
住宅用地以外の土地については、基本的には「固定資産税評価額=本則課税標準額」となります。
住宅用地の場合は特例を適用
住宅用地については、税負担軽減のため課税標準額を一定割合減額する特例が設けられています。
住宅用地には、自分が住んでいる建物の敷地だけでなく、アパート・マンションのように他人へ貸している居住用建物の敷地も含まれます。
住宅用地の場合には、この軽減特例を適用した後の金額が「本則課税標準額」となります。
小規模住宅用地の特例
住宅1戸あたり200㎡までの土地を「小規模住宅用地」といい、
・固定資産税 … 固定資産税評価額 × 1/6
・都市計画税 … 固定資産税評価額 × 1/3
に課税標準額が減額されます。
「1戸あたり」というのがポイントで、アパートやマンションのような集合住宅の場合、敷地面積が200㎡を超えていても、戸数で割った1戸あたりの敷地面積が200㎡以下であればすべて小規模住宅用地として取り扱われます。
一般住宅用地の特例
住宅1戸あたり200㎡を超える部分の土地を「一般住宅用地」といい、
・固定資産税 … 固定資産税評価額 × 1/3
・都市計画税 … 固定資産税評価額 × 2/3
に課税標準額が減額されます。
具体例
・敷地面積:300㎡
・固定資産税評価額:1,800万円
の戸建住宅用地の場合の本則課税標準額は下記のようになります。
<固定資産税>
①小規模住宅用地 1,800万円 × 200㎡/300㎡ × 1/6 = 200万円
②一般住宅用地 1,800万円 × 100㎡/300㎡ × 1/3 = 200万円
③本則課税標準額 ① + ② = 400万円
<都市計画税>
①小規模住宅用地 1,800万円 × 200㎡/300㎡ × 1/3 = 400万円
②一般住宅用地 1,800万円 × 100㎡/300㎡ × 2/3 = 400万円
③本則課税標準額 ① + ② = 800万円
負担水準による調整措置を適用
本則課税標準額を計算した後は、固定資産税・都市計画税が前年度と比べて急激に上昇することを防ぐために負担水準による調整を行います。
負担水準とは
負担水準とは、今年度の本則課税標準額に対する前年度の課税標準額の割合のことで、
「負担水準 = 前年度の課税標準額 ÷ 今年度の本則課税標準額」
で計算します。
この負担水準をベースに調整計算を行うことになりますが、ここでは代表的な「住宅用地」の場合と「商業地等(住宅用地以外の宅地)」の場合についてご説明します。
住宅用地の場合
住宅用地の場合には、
①負担水準が100%以上 … 今年度の本則課税標準額(調整なし)
②負担水準が100%未満 … 前年度の課税標準額 + 今年度の本則課税標準額 × 5%
が課税標準額となります。
ただし、負担水準が100%未満の場合は注意点が2つ。
※②の計算式により計算した金額が今年度の本則課税標準額を超える場合には、今年度の本則課税標準額が上限となります。
※②の計算式により計算した金額が今年度の本則課税標準額の20%未満の場合には、今年度の本則課税標準額の20%となります。
商業地等(住宅用地以外の宅地)の場合
商業地等の場合には、
①負担水準が70%超 … 今年度の本則課税標準額×70%
②負担水準が60%以上70%以下 … 前年度の課税標準額(据え置き)
③負担水準が60%未満 … 前年度の課税標準額 + 今年度の本則課税標準額 × 5%
が課税標準額となります。
ただし、負担水準が60%未満の場合は注意点が2つ。
※③の計算式により計算した金額が今年度の本則課税標準額の60%を超える場合には、今年度の本則課税標準額の60%が上限となります。
※③の計算式により計算した金額が今年度の本則課税標準額の20%未満の場合には、今年度の本則課税標準額の20%となります。
具体例
上記の戸建住宅用地の例(今年度の固定資産税本則課税標準額:400万円、都市計画税本則課税標準額:800万円)で、
・前年度の固定資産税課税標準額:300万円
・前年度の都市計画税課税標準額:600万円
だった場合の負担調整後の課税標準額は下記のようになります。
<固定資産税>
①負担水準 300万円 ÷ 400万円 = 75%
②課税標準額 300万円 + 400万円 × 5% = 320万円
<都市計画税>
①負担水準 600万円 ÷ 800万円 = 75%
②課税標準額 600万円 + 800万円 × 5% = 640万円
課税標準額に税率を乗じて税額を計算
ここまでで、課税標準額の計算が終わりました。
あとはこれに税率をかければ税額が計算できます。
固定資産税の税率
固定資産税の標準税率は「1.4%」です。
標準税率とは、地方税法に規定されている通常の税率のことであり、自治体の条例によって上げ下げすることも可能ですが、多くの自治体では「1.4%」を採用しています。
都市計画税の税率
都市計画税の制限税率は「0.3%」です。
制限税率とは、これを超えてはいけないという税率であり、多くの自治体では「0.2%~0.3%」程度に設定しています。
具体例
上記の例(固定資産税課税標準額:320万円、都市計画税課税標準額:640万円)で、
・固定資産税の税率:1.4%
・都市計画税の税率:0.3%
だった場合の税額は下記のようになります。
<固定資産税>
3,200,000円 × 1.4% = 44,800円
<都市計画税>
6,400,000円 × 0.3% = 19,200円
まとめ
住宅用地の場合には、かなり面倒な計算過程を経てようやく税額にたどり着きます。
今年度は評価替えがあるため前年の税額から増減があるかと思いますが、評価替えがない年でも前年の税額と異なる場合があるのは負担水準による調整措置が行われているためです。
なお上記の計算過程は一般的なものであり、自治体によっては条例で特例を設けている場合もありますので、各自治体のHP等でご確認ください。
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
当事務所のサービスメニュー・料金について
初回のご面談は無料です(単発の税務相談・コンサルティングを除く)。
オンラインでのビデオ面談もお受けしております。