消費税の軽減税率制度とインボイス制度に関する研修を受講してみて。
こんにちは。税理士の関田です。
昨日は、関東信越税理士会埼玉県支部連合会が開催する研修会へ参加するため、大宮ソニックシティまで行ってきました。
テーマは「軽減税率と日本型インボイス制度」ということで、講師はあの熊王先生です。
消費税の軽減税率とインボイスに関するセミナーはこれまで何度か受講してきましたが、消費増税が度々延期されてきたこともあり、正直あまり勉強に身が入らなかったのも事実です。
しかしここにきて、ほぼ間違いなく2019年10月から消費増税・軽減税率導入を行うことが決まったということで(いや、前から決まっていたことなんですけど)、いよいよ本腰を入れて取り組まなければと実感しております。
最近のテレビでは、軽減税率導入によるファストフード店などのレジの混乱を巡る議論がさかんに行われているようですが(店員さんは本当にお気の毒です)、我々実務家としては主に、
- 顧問先への請求書作成に関する指導(区分記載請求書、適格請求書)
- 複数税率による会計処理の煩雑さへの対応
の2つが大きなポイントになりそうです。
まず、2019年10月から導入される「区分記載請求書(簡易型のインボイス)」、そして2023年10月から遂に導入される「適格請求書(インボイス)」ですが、こちらについては熊王先生に限らず様々な先生方が仰っていますが、それほど恐れるようなモノではないそうです。
「区分記載請求書」については、現在使用している請求書や領収書にひと手間・ふた手間加えるだけで十分に要件を満たすことができます(「適格請求書」もその延長線上というイメージ)。
また、そもそも軽減税率対象の売上を含む請求書等を発行しない大多数の事業者については、2023年9月までは現行の請求書等をそのまま使用することも可能です。
ただし、早晩インボイス制度が始まる日は来るわけですから、今のうちから請求書等を「適格請求書」の様式に沿ったフォーマットへ変更しておいても損はなさそうです。
一方、複数税率導入後の会計処理については、ただただ面倒になるだけです。
自計化している顧問先の経理担当者への指導はもちろんのこと、記帳代行業務を行っている会計事務所職員への教育も必要になるでしょう(ウチは私一人なので問題ありませんが)。
8%と10%が混在するだけでも大変なのに、インボイス制度がスタートしたら更に面倒なことになります。
これまでは、相手方が誰であろうと、ほとんどの仕入・経費は何も考えずに消費税の「課税仕入」として処理することができましたが、インボイス制度導入後は、適格請求書が発行されている仕入・経費しか「課税仕入」として処理することができなくなるわけです。
自計化している顧問先の場合、本当に「課税仕入」で大丈夫なのかどうか、どうやってチェックするんですかね?(会計事務所がいちいち全ての適格請求書と突合するなんて現実的ではないし)。
まだ5年近く先の話とはいえ、考えただけで暗澹たる気持ちになってきます…。
もっとも、熊王先生が意外にも「私はインボイス制度賛成派だ」と仰っていたように、免税事業者のいわゆる「益税」の問題が解消されることは、消費税制度の理論上は正しい方向だとは思いますが。
最後に、熊王先生が余談としてお話されていた、宅配新聞に対する軽減税率適用を巡る新聞各社の報道姿勢への批判については、大いに共感するところです。
「他国では軒並み新聞に対して軽減税率が適用されている=日本も新聞には軽減税率を適用すべき」と報じておきながら、実は他国では日本の何倍、何十倍も軽減税率の適用範囲が広く、別に新聞だけが特別扱いされているわけではないという事実には全く触れていなかった、という趣旨のお話でした(「情報操作だ」「報道史に汚点を残した」とも)。
あくまで新聞各社に対する批判ではありましたが、もっといえば、政権与党と新聞各社とのある種の結託(軽減税率を適用してやるから、あんまり政権に批判的なこと書くなよ、みたいな)に対する批判も含まれていたのではないか、と勝手に解釈しています。
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