税理士と印紙税・その①。顧問契約書

ポイント:委任契約であれば印紙は不要、請負契約であれば印紙が必要。決算・申告を行う契約であれば請負契約に該当する。


こんにちは。税理士の関田です。

税理士がクライアントとの間で締結する顧問契約ですが、契約書に収入印紙は必要でしょうか?

印紙税の要・不要は、契約内容により慎重に判断する必要があります。

また、個人の税理士と税理士法人とでは取り扱いが若干異なります。

請負契約と委任契約

まず第一に、顧問契約が「請負契約」なのか、それとも「委任契約」なのかを判断する必要があります。

請負契約とは

請負契約とは、当事者の一方がある仕事の完成を約束し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを内容とする契約をいいます。

「仕事の完成」と「報酬の支払」とが対価関係にあれば請負契約に該当します。

例)建物の工事請負契約、ホームページ作成契約など

委任契約とは

委任契約とは、当事者の一方が相手方に法律行為をすることを委託し、相手方がこれを承諾することを内容とする契約をいいます。

「仕事の完成」という目に見えた結果がなくても、委託された業務を行いさえすれば報酬を受け取ることが可能です。

例)スポーツの指導契約、コンサルティング契約(成果物無し)など

委任契約書は印紙不要

委任契約書は印紙税法上、課税文書とされていません。

つまり、委任契約書に収入印紙は不要です。

税理士の顧問契約は「請負」か「委任」か

税理士の顧問契約が「請負」に該当するか「委任」に該当するかは、契約書に定められた業務内容によって判断します。

「請負」に該当する顧問契約

請負契約は、「仕事の完成」があるかどうかがポイントです。

契約書で定める業務の範囲に、

『税務書類の作成』『申告書の作成』

といった文言があれば「請負」に該当する可能性が高いといえます。

「委任」に該当する顧問契約

委任契約は、「仕事の完成」を必ずしも約束していません。

契約書で定める業務の範囲が、

『税務相談』『書類のチェック』

といった文言だけであり、成果物の作成が求められていない場合には「委任」に該当する可能性が高いといえます。

この場合、契約書に印紙は不要です。

顧問契約が「請負」に該当する場合

第2号文書に該当

税理士の顧問契約が「請負」に該当する場合、印紙税法上、第2号文書(請負に関する契約書)に該当します。

⇒ 国税庁HP 『第2号文書』

第2号文書の印紙税額は、契約書に記載された契約金額により異なります。

⇒ 国税庁HP 『印紙税額の一覧表(その1)』

第7号文書にも該当する可能性あり

また、『営業者』間において「請負」に関する複数の取引を継続的に行うために仕事の内容・単価等を定めた契約で、契約期間が3ヵ月を超えるものは第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)にも該当する可能性があります。

⇒ 国税庁HP 『継続的取引の基本となる契約書』

第7号文書の印紙税額は4,000円です。

なお、税理士個人は『営業者』にあたらないものと解されているため、第7号文書に該当することはありません(税理士法人は『営業者』に該当します)。

第2号文書・第7号文書どちらにも該当する場合

第2号文書と第7号文書、どちらにも該当する契約書については、

・契約金額が記載されている場合 → 第2号文書

・契約金額が記載されていない場合 → 第7号文書

として取り扱われます。

まとめ

以上をまとめると、個人税理士・税理士法人の場合でそれぞれ次の通りとなります。

個人税理士の場合

①委任契約に該当 → 印紙不要

②請負契約に該当 → 第2号文書

税理士法人の場合

①委任契約に該当 → 印紙不要

②請負契約に該当(第7号文書に該当せず)→ 第2号文書

③請負契約に該当(第7号文書にも該当、契約金額の記載あり)→ 第2号文書

④請負契約に該当(第7号文書にも該当、契約金額の記載なし)→ 第7号文書


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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