いつの間にか高額に。同族会社の株価は定期的に試算しておこう

ポイント:零細企業の株式承継は、よほど株価が高額でない限りは王道の「暦年贈与」で。決算の直前になったら、決算後の株価を予測して贈与のタイミングを見極める。


こんにちは。税理士の関田です。

非上場の同族会社における事業承継では、「後継者の育成」と「株式の承継」という2つの大きな課題をクリアする必要があります。

このうち「株式の承継」については、株価が低い会社であればそれほど問題にはなりませんが、社歴の長い優良企業では思いもよらぬ株価になっていることも珍しくありません。

いざというときに慌てないためにも、自社株式の株価は定期的に試算しておきたいものです。

零細企業に「事業承継税制」は不要

現在、中小企業の後継者が株式を円滑に承継できるよう、「事業承継税制」という特例措置が設けられています。

一定の要件を満たすことを前提に、後継者が支払うべき相続税・贈与税の納税を猶予(最終的には免除)してくれる制度です。

あまりにもハードルが高すぎたことから、創設当初は適用を受ける会社がほとんどありませんでしたが、現在は多少要件が緩和されており、適用する会社も徐々に増えてきています。

とはいえ、猶予が取り消された場合のリスク等を考えると、少なくとも株価が ”億単位” の会社でなければ適用はお勧めできません。

つまり、多くの零細企業では従来どおり、毎年少しずつ(あるいは一度に)株式を暦年贈与するという王道的なやり方が現実的でしょう。

そのタイミングを見極めるためにも、現状の株価を把握しておくことは非常に重要です。

株価を試算するタイミング

非上場会社の株価を試算する時期としては、以下のようなタイミングが理想的です。

決算期の前

非上場株式の評価は、主に直前期末の数字をベースに算定します。

つまり、贈与のタイミングが決算期の「前」か「後」かにより、株価が変動するのです。

決算期が近づいてきたらその期の決算予測を行い、

  • 前期よりも利益が増えそう → 株価が上がる前=決算前に贈与しておく
  • 前期よりも利益が減りそう → 株価が下がった後=決算後に贈与する

といった判断を行うことができます。

類似業種の配当金額等が公表された時

非上場株式の評価方法には、「類似業種比準価額方式」と「純資産価額方式」の2つがあり、会社の規模によりどちらかを採用(あるいは併用)して評価します。

このうち「類似業種比準価額方式」では、業種が類似する上場会社の『株価』『配当金額』『年利益金額』『純資産価額』をベースに評価を行いますが、このうち配当・年利益・純資産の数値は1年間固定であり、その年の数値は毎年6月頃に公表されます。

株価に占める「類似業種比準価額」の割合の大きい会社では、これらの数値も株価に影響しますので、その年の数値が公表された段階で試算してみると良いでしょう。

路線価が公表された時

株価に占める「純資産価額」の割合の大きい会社で、かつ土地を保有している場合、土地の相続税評価額が株価に大きく影響します。

都心の一等地など路線価の上下が著しい土地がある場合は特に、です。

その年の路線価は毎年7月1日に公表されますので、7月になったら路線価の変動が純資産価額にどの程度影響を与えたのかを確認してみましょう。

まとめ

自社株式の贈与による承継は、早いうちから計画的に行うことが重要です。

先代がいよいよ高齢になってからでは時間的に足りないケースもあるでしょうし、もちろん相続が起きてからでは手遅れです。

まずは現状の株価を把握するとともに、今後株価がどのように推移していくのかを見極めることは、円滑な株式承継をスタートさせるための第一歩といえるでしょう。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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