会社が2社あると節税になる?利益分散による節税効果を検証
ポイント:中小企業の法人税等の税率は累進税率になっているため、会社を複数作って利益を分散させると一定の節税効果がある。
こんにちは。税理士の関田です。
一人で複数の会社を経営している方がいます。
純粋に事業目的が違うため会社を分けているケースが多いですが、同じような事業目的でも節税のために会社を分けているというケースもあります。
会社が2社ある場合どの程度の節税効果があるのか、試算してみました。
利益を分散して節税
所得が多いほど税率が高くなってゆく超過累進税率の所得税に対し、法人税の税率は一定というイメージを持たれがちですが、中小法人の場合にはわずかながら税率に累進性があります。
例えば、中小法人で平成30年4月1日に開始する事業年度の場合、法人税の税率は、
- 年間所得800万円以下の部分 … 15%
- 年間所得800万円超の部分 … 23.2%
となっています。
また、法人事業税の税率も、
- 年間所得400万円以下の部分 … 3.4%
- 年間所得400万円超800万円以下の部分 … 5.1%
- 年間所得800万円超の部分 … 6.7%
と段階的に税率が上がる構造になっています。
したがって、ある程度利益が出る場合には、会社を2社以上持って利益分散を図ったほうが節税になるというわけです。
利益分散による節税効果を試算してみた
そこで、具体的にどの程度の節税効果があるのか試算してみます。
前提条件
・東京23区内にある資本金1,000万円の普通法人
・事業年度:平成30年4月1日~平成31年3月31日
・年間所得1,600万円
1社のみの場合
法人税・地方法人税
法人税
- 8,000,000×15%=1,200,000円
- (16,000,000円-8,000,000円)×23.2%=1,856,000円
a+b=3,056,000円
地方法人税
3,056,000円×4.4%=134,464円 → 134,400円(百円未満切捨)
法人事業税・地方法人特別税
法人事業税
- 4,000,000×3.4%=136,000円
- 4,000,000×5.1%=204,000円
- (16,000,000円-8,000,000円)×6.7%=536,000円
a+b+c=876,000円
地方法人特別税
876,000円×43.2%=378,432円 → 378,400円(百円未満切捨)
法人住民税(法人税割・均等割)
法人税割
3,056,000円×12.9%=394,224円 → 394,200円(百円未満切捨)
均等割
70,000円
合計税額 → 4,909,000円
2社ある場合(所得は800万円ずつ)
法人税・地方法人税
法人税
8,000,000×15%=1,200,000円
1,200,000円×2社=2,400,000円
地方法人税
1,200,000円×4.4%=52,800円
52,800円×2社=105,600円
法人事業税・地方法人特別税
法人事業税
- 4,000,000×3.4%=136,000円
- 4,000,000×5.1%=204,000円
a+b=340,000円
340,000円×2社=680,000円
地方法人特別税
340,000円×43.2%=146,880円 → 146,800円(百円未満切捨)
146,800円×2社=293,600円
法人住民税(法人税割・均等割)
法人税割
1,200,000円×12.9%=154,800円
154,800円×2社=309,600円
均等割
70,000円×2社=140,000円
2社合計税額 → 3,928,800円
表にして比較してみる
上記の試算をまとめたのが下の表です。
税目 | 1社のみの場合 | 2社ある場合 |
法人税 | 3,056,000円 | 2,400,000円 |
地方法人税 | 134,400円 | 105,600円 |
法人事業税 | 876,000円 | 680,000円 |
地方法人特別税 | 378,400円 | 293,600円 |
法人住民税(法人税割) | 394,200円 | 309,600円 |
法人住民税(均等割) | 70,000円 | 140,000円 |
計 | 4,909,000円 | 3,928,800円 |
まとめ
上記のケースでは、会社を2つに分けたほうが年間約100万円も節税になることが分かりました。
しかし、だからといって、会社を複数持ったほうが有利だと早合点してはいけません。
次回は、会社を複数持つメリット・デメリットをもう少し掘り下げてみたいと思います。
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
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