青色申告が取り消しとなる条件と再申請の方法。法人編

ポイント:実務上は2期連続で期限内申告できずに取り消されるケースが多い。再申請する場合には、取消しの通知日から1年経過した後に再度「青色申告承認申請書」を提出。


こんにちは。税理士の関田です。

ほとんどの法人は、法人税の申告を「青色申告」により行っています。

青色申告とは、一定のルールに従って帳簿の作成・保存を行うことで様々な税金上の特典を受けられる制度であり、税務署に「青色申告承認申請書」を提出し承認を受けたうえで行うことができます。

しかし、”ある理由”から青色申告の承認を取り消されてしまうケースもあります。

法人の青色申告のメリット

取消し条件を確認する前に、そもそも法人が青色申告を行うべき理由についておさらいしておきましょう。

法人(中小企業)が青色申告を行うメリットとしては、主に次のようなものがあります。

  • 欠損金を翌期以降に繰り越すことができる
  • 欠損金を前期に繰り戻して法人税の還付を受けることができる
  • 30万円未満の少額減価償却資産を全額経費にできる
  • 各種特別償却、特別控除の特典を受けられる

白色申告になるとこれらのメリットを享受できなくなってしまいますので、くれぐれも青色申告を取り消されないよう注意が必要です。

法人の青色申告が取り消される条件

法人の青色申告の承認の取消しについては法人税法127条1項に規定されており、実務上はこの規定の適用に関する留意事項を定めた「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」に基づいて取り扱われています。

帳簿書類を提示しない場合

税務調査において税務職員が帳簿書類の提示を求めたにもかかわらず、法人がその帳簿書類の提示を拒否した場合には、青色申告の承認の取消事由に該当します。

この場合、その提示がされなかった事業年度のうち最も古い事業年度以降の事業年度について、承認が取り消されることになります。

税務署長の指示に従わない場合

帳簿書類の備付け等について、法人が税務署長の指示に従わない場合には、青色申告の承認の取消事由に該当します。

この場合、その指示に係る事業年度以降の事業年度について、承認が取り消されることになります。

隠ぺい、仮装等があった場合

青色申告法人につき、次のいずれかに該当する場合には、その該当することとなった事業年度以降の事業年度について、青色申告の承認が取り消されます。

① 所得金額の更正・決定があった場合において、その事業年度の「更正・決定後の所得金額」のうち「隠ぺい・仮装の事実に基づく所得金額」が、その「更正・決定後の所得金額」の50%相当額を超えるとき(ただし「隠ぺい・仮装の事実に基づく所得金額」が500万円未満のときを除く)

② 欠損金額を減額する更正があった場合において、その事業年度の「更正により減少した欠損金額」のうち「隠ぺい・仮装の事実に基づく金額」が、「当初申告の欠損金額」の50%相当額を超えるとき(ただし「隠ぺい・仮装の事実に基づく金額」が500万円未満のときを除く)

③ 帳簿書類への記載等が不十分である等のため、推計によらなければ適正な所得計算ができないと認められる状況にある場合

なお、上記①又は②に該当する場合であっても、その事業年度前7年以内の各事業年度において次のいずれの要件も満たし、かつ、今後適正な申告をする旨の申出をした場合には、青色申告の承認の取消しを見合わせることとされています。

  1. 青色申告の承認取消処分を受けていないこと
  2. 税務調査で否認された「隠ぺい・仮装の事実に基づく金額」が500万円未満であったこと

無申告又は期限後申告の場合

2事業年度連続して期限内に申告書の提出がない場合には、青色申告の承認の取消事由に該当します。

この場合、その2事業年度目以降の事業年度について、承認が取り消されることになります。

相当の事情がある場合

上記のような事由に該当しない場合でも、正規の帳簿を作成していない(二重帳簿、仮装・隠ぺいした帳簿を作成している等)など、その法人の帳簿書類の記録の状況、申告書の提出状況等からみて青色申告の承認の取消しをすることが相当と認められるときは、取消しが行われるケースもあります。

青色申告の再承認を受けるには

青色申告が取り消される場合、税務署から「青色申告の承認の取消通知書」が届きます。

取消し後、再び青色申告の承認を受けることは可能ですが、取消しの通知を受けた日から1年以内に提出した「青色申告承認申請書」については、その申請を却下することができることとされています(法人税法123条3号)。

1年以内に再申請をできないわけではありませんが、通常は却下されることになるため、実務上は取消しの通知日から1年を経過した後に「青色申告承認申請書」を再提出するのが一般的です。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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