内縁の夫婦は税金で損?事実婚の税務上の取り扱い・相続税編
ポイント:事実婚の夫・妻はそもそも法定相続人になれない。遺言書等により財産をもらった場合でも、戸籍上の配偶者であれば使える非課税・評価減などは適用されない。
こんにちは。税理士の関田です。
前回は、事実婚(内縁)関係にある夫婦の所得税上の取扱いについて解説しました。
⇒ 前回ブログ 『内縁の夫婦は税金で損?事実婚の税務上の取り扱い・所得税編』
今回は相続税(贈与税)編です。
目次
そもそも法定相続人になれない
事実婚(内縁)の配偶者は、民法上の法定相続人に該当しないため、そもそも相続権がありません。
もしパートナーに財産を遺したい場合には、
- 生前に贈与しておく
- 生命保険金の受取人にしておく
- 遺言書を書いておく
という方法があります。
また、他に相続人が一人もいない場合には、家庭裁判所へ「特別縁故者に対する相続財産分与の申立て」を行うことにより、財産の全部又は一部をもらえる可能性があります。
配偶者の相続税額の軽減が適用されない
相続税の計算上、被相続人の配偶者が取得した財産については、1億6,000万円までであれば相続税はかからず、また1億6,000万円を超えたとしても配偶者の法定相続分相当額までであれば相続税はかかりません。
ただし、この規定における「配偶者」は、「婚姻の届出をした者に限る」とされています。
つまり、事実婚(内縁)の場合には配偶者の相続税額の軽減は適用されないということです。
生命保険金等の非課税が適用されない
被相続人の死亡により相続人が受け取った生命保険金等については、
「 500万円 × 法定相続人の数 」
までは非課税となります。
しかし、事実婚(内縁)の配偶者は「相続人」ではありませんので、生命保険金等の非課税は適用されません。
小規模宅地等の評価減が適用されない
相続開始の直前において被相続人の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等を、一定の要件を満たす親族が取得した場合には、宅地等の評価額が最大80%減額されます。
しかし、事実婚(内縁)の配偶者は「親族」ではありませんので、小規模宅地等の評価減は適用されません。
相続税額が2割加算される
相続や遺贈により財産を取得した人が、被相続人の一親等の血族及び配偶者以外の人である場合には、その人の相続税は2割増しになります。
事実婚(内縁)の配偶者は「戸籍上の配偶者」ではありませんので、相続税額の2割加算の対象となります。
贈与税の配偶者控除が適用されない
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産又は居住用不動産を購入するための金銭の贈与が行われた場合には、基礎控除と合わせて2,110万円までであれば贈与税が非課税となります。
⇒ 国税庁HP 『夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除』
この場合の婚姻期間とは、「戸籍上の夫婦であった期間」のことを指します。
つまり、事実婚(内縁)の夫婦間の贈与については、贈与税の配偶者控除は適用されないということです。
また、事実婚状態から法律婚に至った場合でも、婚姻期間が20年以上かどうかは法律婚期間のみで判定します。
まとめ
法律婚でも事実婚でも、夫婦が協力し合って財産を築いてきたことに変わりはありません。
しかし、事実婚の場合には相続権すらなく、遺言などにより財産をもらえたとしても相続税の負担が重くのしかかる可能性があります。
まずは、自分がいなくなった後の配偶者の生活を保障するためにも、生前贈与や遺言により財産を確実に渡すことを考えましょう。
また、相続財産が基礎控除を超え、相続税がかかるような場合には、もう一度婚姻形態のあり方を見直すことも必要でしょう。
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
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