法人の消費税の納税義務。設立1期目から3期目までの判定方法
ポイント:資本金1,000万円未満で設立すれば2期目までは原則として免税。3期目は原則として1期目の課税売上高で判定するが、1期目が1年未満の場合には年換算が必要。
こんにちは。税理士の関田です。
前回は個人事業主の開業1年目から3年目までの消費税の納税義務について解説しました。
⇒ 前回ブログ 『個人事業主の消費税の納税義務。開業1年目から3年目までの判定方法』
法人の場合、基本的な考え方は個人事業主と同様ですが、判定方法はもう少し複雑になります。
目次
設立1期目の納税義務の判定
資本金1,000万円以上であれば課税事業者
新設法人が、
- 設立時の資本金が1,000万円以上の法人
- 課税売上高5億円超の法人が50%超を出資して設立した法人(いわゆる大企業の子会社)
のいずれかに該当する場合、設立2期目までは消費税の納税義務が免除されないこととなっています。
したがって、上記のような法人の設立1期目は自動的に消費税の課税事業者となります。
資本金1,000万円未満であれば免税事業者
それでは、設立時の「資本金が1,000万円未満」で、かつ「課税売上高5億円超の法人が50%超を出資して設立した法人」にも該当しない場合はどうでしょう。
消費税の納税義務は原則、基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合に生じます。
- 「基準期間」とは、法人の場合、前々事業年度(2期前)のこといいます。
- 「課税売上高」とは、消費税のかかる売上のことをいいます(アパートの家賃収入など消費税のかからない売上もありますが、ほとんどの売上は消費税がかかります)。
設立1期目はそもそも基準期間が存在しないため、消費税の免税事業者となります。
設立2期目の納税義務の判定
資本金1,000万円以上であれば課税事業者
設立2期目についても、「資本金が1,000万円以上」の法人や、「課税売上高5億円超の法人が50%超を出資して設立した法人」については自動的に消費税の課税事業者となります。
ちなみに、資本金が1,000万円以上かどうかは2期目の事業年度開始日(期首)における資本金の額で判定しますので、設立時の資本金が1,000万円未満であっても、その後1期目の途中に増資を行って資本金が1,000万円以上になった場合、2期目は課税事業者となります。
資本金1,000万円未満であれば原則として免税事業者
設立2期目の期首における「資本金が1,000万円未満」で、かつ「課税売上高5億円超の法人が50%超を出資して設立した法人」にも該当しない場合には、1期目と同様に基準期間が存在しませんので、原則として免税事業者となります。
特定期間の課税売上高に注意
ただし、特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合には、例外として消費税の課税事業者となります。
「特定期間」とは、法人の場合、前事業年度の開始の日から6月の期間をいいます。
前事業年度が丸1年間あれば、シンプルに前期の前半6ヵ月が「特定期間」となりますが、設立1期目のように事業年度が1年に満たない場合には特定期間の判定が複雑となりますので、以下の国税庁ホームページの事例をご確認ください。
なお、設立1期目が7ヵ月以下であれば、特定期間の課税売上高による判定は不要です。
特定期間の給与支払額で判定することも可
なお、特定期間の課税売上高による消費税の納税義務の判定については、特定期間中の「課税売上高」に代えて、特定期間中の「給与支払額」が1,000万円超かどうかにより判定することも可能です。
たとえば、特定期間の課税売上高が1,500万円、同期間の給与支払額が900万円だった場合、
- 課税売上高:1,500万円 > 1,000万円 → 課税事業者
- 給与支払額:900万円 ≦ 1,000万円 → 免税事業者
のどちらかで判定することになります(課税事業者になってもOK、免税事業者でもOK)。
「a.」を採用して課税事業者になる場合は税務署に届出書を提出しますが、通常は課税事業者にはなりたくありませんので、「給与支払額」による判定を採用して免税事業者となります(届出は不要)。
もちろん、特定期間の課税売上高・給与支払額ともに1,000万円超の場合には、問答無用で課税事業者となります。
設立3期目の納税義務の判定
原則は基準期間の課税売上高で判定
設立3期目は基準期間、つまり設立1期目の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかにより消費税の納税義務を判定します。
ただし、ここで注意しなければならないのは、基準期間が1年未満の場合、課税売上高を年換算して判定する必要があるということです。
たとえば、
- 会社設立日:4月16日
- 決算日:11月30日
- 1期目の課税売上高:800万円
の場合、年換算後の1期目の課税売上高は
「 800万円 ÷ 8月 × 12月 = 1,200万円 > 1,000万円 」
となるため、3期目は課税事業者となります。
なお、上記のケースでは設立1期目は「7ヵ月+15日」ですが、1月未満の端数は1月として計算します。
ちなみに個人事業主の場合、開業1年目が1年未満であっても課税売上高の年換算は行いませんので、法人と混同しないよう注意が必要です。
特定期間の課税売上高による判定も必要
また、特定期間の課税売上高による判定は3期目以降も継続します。
したがって、設立3期目であれば2期目の前半6ヵ月の課税売上高と給与支払額がともに1,000万円超の場合には、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても課税事業者となります。
まとめ
法人の場合、設立2期目までは資本金なども納税義務の判定要素となるほか、1年未満の基準期間の課税売上高を年換算する必要があるなど、個人事業主よりも慎重な判定が求められます。
なお、新たに起業する場合には、当初2年間は個人事業主として営業し、3年目に課税事業者となるタイミングで会社を設立して法人成りすれば、最長4年間は消費税の納税義務を免れることも可能です。
消費税の免税制度を上手に活用して節税を図りましょう。
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
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