相続税申告での前受家賃の取扱い。債務控除できる場合・できない場合

ポイント:相続開始日において支払期日は到来していないものの既に支払われている家賃は「前受家賃」として被相続人の債務となり、相続財産から控除できる。


こんにちは、川越市の税理士・関田です。

前回は、「未収家賃」があった場合の相続税上の取扱いについて解説しました。

⇒ 前回ブログ 『相続税申告での未収家賃の取扱い。滞納中の賃料も相続財産になる』

今回は反対に、「前受家賃」の相続税上の取扱いを取り上げます。

巷でよく『前受家賃は債務控除の対象にならない』と解説している記事を見かけますが、そのほとんどは説明不足といえます。

ケースによっては問題なく債務控除できますので、騙されてはいけません。

前受家賃の相続税上の取扱い

前受家賃についても未収家賃と同様、亡くなった日において「支払期日」が到来しているか否かがポイントとなります。

債務控除できる場合

相続税申告上、前受家賃として債務控除の対象となるのは、以下の2つの要件を両方満たす家賃です。

① 死亡した日においてまだ支払期日が到来していない

② 死亡した日において既に支払われている

ここで、当月分家賃を当月末日までに支払う契約(後払い方式)を前提にご説明しましょう。

たとえば、オーナーが9/10に亡くなったケースで、まだ支払期日(9/30)が到来していない9月分の家賃を9/5時点で既に受け取っていたとします。

この場合、9月分の家賃は、本来9/10時点ではまだ受け取る権利が発生していないことから”預り金”的なものと考え、「前受家賃」として債務控除することが可能です。

所得税の準確定申告では、もし複式簿記による帳簿を付けている場合、9/11~9/30分を「前受家賃」として計上しますが、相続税申告ではこのような未経過分の家賃の日割り計算は行わず、9月分を全額「前受家賃」として債務控除することになります。

債務控除できない場合

上記の例で、もし当月分家賃を前月末日までに支払う契約(前払い方式)だったとしたらどうでしょう?

この場合、オーナーが亡くなった9/10より前に支払期日(8/31)が到来している9月分の家賃を9/5時点で受け取っていたとしても、これを「前受家賃」として債務控除することはできません。

所得税の準確定申告では、もし複式簿記による帳簿を付けている場合、9/11~9/30分を「前受家賃」として計上しますが、相続税申告ではこのような未経過分の家賃は債務控除の対象となりませんのでご注意ください。

具体例

少し分かりにくいかと思いますので、債務控除が可能なケースについて図解を使ってご説明します。

「当月分・当月末日支払」の場合

上記の例では、死亡日時点でまだ支払期日が到来しておらず、かつ既に入金されている11月分の家賃を「前受家賃」として債務控除します。

被相続人の準確定申告では11/26~11/30分の未経過家賃だけを「前受家賃」として計上します(複式簿記の場合)が、相続税申告上はあくまで11月分の家賃”全額”が「前受家賃」となりますのでご注意ください。

「当月分・前月末日支払」の場合

上記の例では、死亡日時点でまだ支払期日が到来しておらず、かつ既に入金されている12月分の家賃を「前受家賃」として債務控除します。

11/26~11/30分の未経過家賃については、被相続人の準確定申告では「前受家賃」として計上します(複式簿記の場合)が、相続税申告上は「前受家賃」とはなりませんのでご注意ください。

まとめ

家賃の入金は月の後半に集中するため、相続税上の「前受家賃」は相続開始日が月末近くの場合に発生しやすい傾向にあります。

実務上、債務控除の失念が目立つ項目ですので、既に申告済みの相続税申告書も再度見直してみることをお勧めします。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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