建築中・建替え中に発生した相続と小規模宅地特例。事業用建物の場合

ポイント:元々事業の用に供していた建物を取り壊すなどして代わりの事業用建物を建築している場合には、建築中に相続が発生したとしても小規模宅地等の特例は適用可能。


こんにちは。税理士の関田です。

相続税申告における「小規模宅地等の評価減」の規定は土地の評価額が80%(もしくは50%)も減額される非常に大きな特例ですが、原則として相続開始の直前において建物又は構築物の敷地の用に供されていることが前提です。

では、不幸にも建物の建築中・建替え中に相続が発生してしまった場合、小規模宅地等の特例を使うことはできないのでしょうか?

事業用建物の場合と居住用建物の場合に分けて解説したいと思います。

まず今回は、事業用建物の場合について。

事業用建物の建築中でも適用できるケースとは

事業用建物の建築中に相続が発生した場合の小規模宅地等の特例の取扱いについては、以下の通達に書かれています。

措通69の4-5(事業用建物等の建築中等に相続が開始した場合)

被相続人等の事業の用に供されている建物等の移転又は建替えのため当該建物等を取り壊し、又は譲渡し、これらの建物等に代わるべき建物等(被相続人又は被相続人の親族の所有に係るものに限る。)の建築中に、又は当該建物等の取得後被相続人等が事業の用に供する前に被相続人について相続が開始した場合で、当該相続開始直前において当該被相続人等の当該建物等に係る事業の準備行為の状況からみて当該建物等を速やかにその事業の用に供することが確実であったと認められるときは、当該建物等の敷地の用に供されていた宅地等は、事業用宅地等に該当するものとして取り扱う。

(続く)

つまり、元々あった事業用建物を取り壊すなどして代わりの事業用建物を建築している場合には、建物完成後速やかに事業の用に供することが確実であれば小規模宅地等の評価減を適用できるということです。

では、どのような場合に「速やかに事業の用に供することが確実」といえるのでしょうか?

これについては、上記通達の後段に書かれています。

(承前)

なお、当該被相続人と生計を一にしていたその被相続人の親族又は当該建物等若しくは当該建物等の敷地の用に供されていた宅地等を相続若しくは遺贈により取得した当該被相続人の親族が、当該建物等を相続税の申告期限までに事業の用に供しているとき(申告期限において当該建物等を事業の用に供していない場合であっても、それが当該建物等の規模等からみて建築に相当の期間を要することによるものであるときは、当該建物等の完成後速やかに事業の用に供することが確実であると認められるときを含む。)は、当該相続開始直前において当該被相続人等が当該建物等を速やかにその事業の用に供することが確実であったものとして差し支えない。

まず、相続税の申告期限までに建物が完成して事業の用に供している場合には、問題なく「速やかに事業の用に供することが確実」と認められます。

ただし、建築工事が長期に及ぶため申告期限までに建物が完成していない場合であっても、完成後速やかに事業の用に供することが確実であると認められればOKとされています。

「以前は借家」「新規事業」の場合は対象外

前述の通り、建築中であっても「事業用宅地等」として取り扱われるのは、元々事業の用に供していた建物があり、これを建替え等する場合のみです。

したがって、

  • 元々は店舗を借りて事業を行っていたが、自前の店舗を建築中
  • 新たに開業するため、自前の店舗を建築中

といったケースでは小規模宅地等の特例の対象外となります。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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