被相続人の準確定申告の注意点まとめ③。所得控除編

こんにちは。税理士の関田です。

全5回にわたってお送りする準確定申告シリーズ。

⇒ 第1回 『被相続人の準確定申告の注意点まとめ①。事業所得・不動産所得編』

⇒ 第2回 『被相続人の準確定申告の注意点まとめ②。給与・配当・雑・譲渡所得編』

3回目となる今回は、所得控除に関する留意点についてです。

人的控除

配偶者控除・配偶者特別控除

準確定申告において配偶者控除・配偶者特別控除が適用できるか否かは、死亡時の現況により判定するものとされています。

まず、亡くなった時点で被相続人と同一生計だったというのが前提ですが、ここは配偶者であればほとんど問題ないでしょう。

そのうえで、亡くなった時点での配偶者の年間の合計所得金額を見積り、もし所得要件を満たしている場合には配偶者(特別)控除を適用することができます。

あくまで”見積り”でOKですので、もし年末までに配偶者に予測不能の偶発的な所得(譲渡所得など)が生じ、結果として所得要件を満たさなくなったとしても、被相続人の準確定申告について修正申告を行う必要はありません

もちろん、被相続人のアパートを配偶者が相続した場合など、相続開始後に配偶者の所得が明らかに増加する場合にはそれを加味して見積もらなければなりませんので、亡くなった時点で専業主婦だったからといって必ずしも配偶者控除が受けられるわけではありません。

扶養控除

準確定申告における扶養控除についても、適用要件を満たしているかどうかは死亡時の現況により判定します。

亡くなった時点で被相続人と生計を一にしていた親族について年間の合計所得金額を見積もって判定するというのは、上記の配偶者(特別)控除の考え方と同じです。

障害者控除

障害者控除については、被相続人自身が障害者だった場合と、同一生計配偶者扶養親族のうちに障害者がいる場合がありますが、準確定申告ではいずれも被相続人が亡くなった時点で障害者(特別障害者)に該当していたかどうかにより判定します。

物的控除

社会保険料控除

準確定申告で控除できる社会保険料(健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料など)は、1月1日から亡くなった日までに支払った保険料です。

もちろん、生前に受け取った給与や年金から天引きされていた社会保険料も控除の対象となります。

なお、亡くなった日の翌日以後に相続人が支払った被相続人分の社会保険料については、相続人の確定申告において控除の対象となる可能性があります。

医療費控除

準確定申告で医療費控除の対象となるのは、1月1日から亡くなった日までに支払った医療費です。

病院に入院したまま亡くなった場合、最後の入院期間の医療費は亡くなった日の翌日以後に支払うケースが多いかと思いますが、この分は相続人の確定申告において控除の対象となる可能性があります。

なお、入院給付金高額療養費などの補填金がある場合には支払った医療費から差し引かなければなりませんが、こちらは亡くなった日の翌日以後に入金されたものであっても、生前に支払った医療費と紐付きのものであれば準確定申告の医療費から差し引く必要があります。

生命保険料控除・地震保険料控除・小規模企業共済等掛金控除

準確定申告で控除できる生命保険料・地震保険料・小規模企業共済等掛金は、1月1日から亡くなった日までに支払った保険料・掛金です。

これらの控除を受けるためには控除証明書が必要となりますので、準確定申告の期限に間に合うよう、早めに保険会社等へ請求しましょう。

なお、年末近くに亡くなった場合には既にその年の控除証明書が届いている可能性もありますが、生命保険料控除証明書の「12月末まで払い込んだ場合の申告額」はそのまま控除することができないケースが多いので気を付けましょう。

寄附金控除

準確定申告で寄附金控除の対象となるのは、1月1日から亡くなった日までに支払った寄附金です。

もちろん、近年盛んな「ふるさと納税」も生前に行ったものは寄附金控除の対象となります。

ただし、ふるさと納税はその年の所得税だけでなく翌年の住民税も減税されることで、結果「自己負担額2,000円」で寄附できる制度ですので、亡くなった年に行ったふるさと納税については住民税の減税効果がないぶん自己負担額が増えることになってしまいます。

なお、認定NPO法人や公益社団法人などに対する寄附金については、所得控除ではなく税額控除を選択することも可能です(有利判定が必要)。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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