思わぬ贈与税も。住宅資金贈与に係る相続時精算課税の特例の落とし穴

ポイント:60歳未満の父母等が住宅取得資金と土地をセットで贈与する場合、現金の贈与額が住宅取得資金贈与の非課税枠内だと相続時精算課税の特例は使えない。


こんにちは、川越市の税理士・関田です。

子どもや孫が住宅を建築するにあたっては、贈与税の非課税特例を利用した父母・祖父母からの住宅取得資金の援助がよく行われます。

その際、建築する住宅の敷地が父母・祖父母の名義であれば、せっかくなので土地もセットで生前贈与してしまいたいという方もいるでしょう。

とはいえ、土地の贈与については多額の贈与税がかかるため、もし実行する場合には相続時精算課税制度の適用も検討することになるかと思いますが、贈与者が60歳未満の場合には注意が必要です。

住宅取得資金贈与に係る相続時精算課税の特例とは?

相続時精算課税制度の概要

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母又は祖父母から20歳以上(2022年4月からは18歳以上)の子又は孫に対する贈与について、2,500万円までは贈与税がかからない(2,500万円を超えた部分について20%の贈与税を納める)ものの、贈与者が亡くなった時には贈与財産を相続財産に加算して相続税を納めなければならない制度です。

贈与財産は最終的に相続財産に取り込まれるため、資産家の相続税対策としての効果は薄いといえますが、相続税がかからないと見込まれる方であれば贈与税を気にすることなく財産を次世代に移転することができます。

なお、相続時精算課税と通常の暦年課税贈与(110万円まで非課税)は選択制であり、一度相続時精算課税を選択してしまうと、その父母・祖父母からは暦年贈与を受けることができなくなります(別の父母・祖父母などから暦年贈与を受けることは可能)。

相続時精算課税の特例とは?

前述のとおり、相続時精算課税制度の適用には「贈与者が60歳以上」という要件がありますが、住宅取得資金の贈与を行う場合には、特例により贈与者が60歳未満であっても相続時精算課税を選択することが可能です。

⇒ 国税庁HP 『相続時精算課税選択の特例』

父母・祖父母など直系尊属からの住宅取得資金贈与については一定額まで贈与税が非課税となる特例がありますが、非課税枠を大きく超えて贈与を行うケースでは相続時精算課税の適用も選択肢の一つとなります。

住宅取得資金贈与に係る相続時精算課税の特例の注意点

住宅取得資金贈与の非課税枠内の贈与では適用されない

60歳未満の父母・祖父母からの住宅取得資金贈与について相続時精算課税の特例を適用したい場合には、気を付けなければいけないことがあります。

それは、住宅取得資金贈与について「直系尊属からの住宅取得資金贈与の非課税」の特例により贈与税の課税価格に算入すべき金額がない場合(つまり、非課税枠内の贈与だった場合)には、相続時精算課税の特例が適用されないということです。

もっとも、非課税枠内の贈与であればわざわざ相続時精算課税を使わなくても通常の暦年課税贈与で済むわけで、問題となるのは住宅取得資金とそれ以外の財産(土地など)をセットで贈与するために相続時精算課税の特例を使おうというケースです。

以下、具体例で見てみましょう。

具体例

<前提条件>

  • 贈与者:父 58歳
  • 受贈者:子 30歳
  • 贈与財産(相続税評価額):住宅取得資金(1,200万円)、土地(2,000万円)

①住宅取得資金贈与の非課税枠が1,000万円だった場合

相続時精算課税の特例を適用したとすると・・・

(1,200万円-1,000万円)+ 2,000万円 - 2,500万円 ≦ 0  ∴ 贈与税なし

②住宅取得資金贈与の非課税枠が1,500万円だった場合

相続時精算課税の特例を適用したいが・・・

1,200万円 - 1,500万円 ≦ 0  ∴非課税枠内のため相続時精算課税の特例不可

暦年課税が適用される

(1,200万円-1,200万円)+ 2,000万円 - 110万円 = 1,890万円

1,890万円 × 45% - 265万円 = 585.5万円

まとめ

以上のように、60歳未満の父母・祖父母から子・孫へ住宅取得資金と土地等をセットで贈与する場合には、住宅取得資金について非課税枠を超える金額の贈与を行わなければ相続時精算課税の特例は適用できず、暦年課税贈与となり多額の贈与税がかかってしまいます。

意外な盲点ですので、くれぐれもご注意を。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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