共有名義で購入するマイホームの持分割合の決め方。諸経費の負担は?
ポイント:持分割合の計算にあたり、仲介手数料や取得に係る各種税金の負担については考慮するが、家具・家電の購入費用や引越費用等については考慮しない。
こんにちは。税理士の関田です。
マイホームを夫婦や親子で共同購入する場合、各人がお金を出した割合に応じて登記上の共有持分を決めることになるのはご存じのとおりです。
しかし、不動産を購入する際には土地建物の本体価格だけでなく、様々な諸経費が発生することになります。
はたして、共有持分を決めるにあたり、数ある諸経費のうちどこまでを考慮する必要があるのでしょうか?
マイホームの共有持分割合の決め方
不動産を共有名義で購入する際の持分割合は、その不動産の購入代金の総額のうち、誰がいくらのお金を出したのか(ローンも含む)によって決めることになります。
各人の共有持分割合 = 各人が出した資金 / 購入代金の総額
たとえば、総額3,000万円のマイホームについて、
「夫:2,000万円、妻:1,000万円」
の割合でお金を出し合った場合、それぞれの共有持分は
「夫:2/3、妻:1/3」
となります。
もし、資金拠出割合と異なる割合で登記してしまった場合、本来の割合よりも多い割合で登記された人に贈与税が課税される恐れがありますのでご注意ください。
さて、ここで問題となるのは、上記の計算式における分母『購入代金の総額』にはどこまでの費用が含まれるのかということです。
購入代金の総額に含まれるもの・含まれないもの
含まれるもの
以下の費用については、持分割合の計算上、購入代金の総額に含めることになります。
- 土地の購入代金
- 建物の購入代金(設計料、追加工事代、中古物件のリフォーム代なども含む)
- 固定資産税精算金
- 仲介手数料
- 不動産取得税(マイホームの場合は軽減措置により発生しない場合も)
- 印紙税(売買契約書、請負契約書)
- 所有権移転登記費用(登録免許税、司法書士手数料)
- 抵当権設定登記費用(登録免許税、司法書士手数料)
- 土地の造成費用
- 古家の購入代金、解体費用
など…
含まれないもの
以下の費用については、持分割合の計算上、購入代金の総額に含めません。
- 家具、家電製品の購入費用
- 管理費、修繕積立金の精算金
- 火災保険料
- 引越し費用
など…
具体例
それでは、新築戸建住宅を購入した例でご説明しましょう。
まず、前提条件は以下の通り。
<かかった費用>
- 土地建物の購入代金:4,000万円
- 固定資産税精算金:10万円
- 仲介手数料:120万円
- 印紙税:1万円
- 所有権移転登記費用 15万円
- 抵当権設定登記費用:6万円
- 家具、家電製品の購入費用:200万円
- 火災保険料(10年):10万円
- 引越し費用:30万円
→ 計 4,392万円
<資金拠出額>
- 夫:3,892万円(ローン3,500万円、自己資金392万円。諸経費は夫負担とする)
- 妻:500万円(全額自己資金)
→ 計 4,392万円
この場合の夫・妻の共有持分割合(土地と建物の持分割合を同じにする場合)は以下のように計算します。
<購入代金の総額>
4,392万円 - 240万円※ = 4,152万円
※ 200万円(家具・家電)+ 10万円(火災保険)+ 30万円(引越し)
<共有持分割合>
- 夫 … (3,892万円-240万円)/ 4,152万円 = 0.8795… → 88%(22/25)
- 妻 … 500万円 / 4,152万円 = 0.1204… → 12%(3/25)
なお、ほとんどのケースでは上記のように端数が出るかと思いますが、ある程度切りのいい数字で丸めてしまって大丈夫です。
厳密には、切り捨てた側から切り上げた側(上記の例でいえば「妻から夫」)への贈与となりますが、切り捨てた(切り上げた)割合に対応する金額が110万円以内であれば、贈与税の基礎控除額の範囲内のため贈与税はかかりません。
住宅ローン控除における「取得対価の額」との違いに注意
なお、住宅ローン控除を受ける際、計算明細書に記入する「取得対価の額」は上記の「購入代金の総額」よりも更に範囲が狭まります。
仲介手数料、不動産取得税、印紙税、登記費用についても「取得対価の額」には含めませんのでご注意ください。
⇒ 裁決事例集 『住宅取得等特別控除の対象となる家屋の取得の対価の額には、不動産仲介手数料や不動産登記費用等は含まれないとした事例』
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
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