配偶者控除・扶養控除の重複適用。準確定申告した年は2回受けられる
ポイント:被相続人に扶養されていて、さらに相続後は別の親族に扶養されている人は、①被相続人の準確定申告と ②別の親族の確定申告(年末調整)の両方で扶養に入れる。
こんにちは。税理士の関田です。
もし2人以上の親族から扶養されている人がいる場合、親族のうち誰か1人だけがその人を税金上の扶養に入れることができます。
これは、税務を生業にしていない方でも知っている基本的なルールです。
税務署は配偶者控除や扶養控除の適用ミスについては厳しくチェックしていますので、もしダブルで適用してしまったような場合には、本人もしくは年末調整を行った勤務先に連絡が来ることになるでしょう。
ただし、相続があった年についてはダブル適用が認められるケースもあるのですが、こちらは意外と知られていません。
目次
配偶者控除・扶養控除を受けられるのは原則1人だけ
ある人を複数の親族が扶養している場合、その人を「控除対象配偶者」もしくは「控除対象扶養親族」として扶養に入れることができるのは、扶養者のうち誰か1人だけです。
たとえば、共働きの夫婦が17歳の子どもを扶養している場合、夫または妻のどちらか一方だけが子どもを扶養に入れる(扶養控除を受ける)ことができます。
複数の親族の扶養に該当する場合、基本的には所得の一番多い人の扶養に入れるケースが多いでしょう。
「配偶者控除」や「扶養控除」は”税額控除”ではなく”所得控除”です。
つまり、『控除額×税率』分が減税(節税)になりますので、「所得が多い=税率が高い」人の扶養に入れた方が有利になるわけです。
準確定申告を行った年は重複適用できる場合も
亡くなった人に扶養されていた人がいる場合は注意
ただし、被相続人に扶養されていた人については、準確定申告で被相続人の扶養に入れるだけでなく、その年の確定申告もしくは年末調整で別の親族の扶養に入れるケースがあります。
配偶者控除・扶養控除の重複適用は認められていないのでは?と思われるかもしれませんが、それはあくまで「同一の時点で」複数の人に扶養されている場合のお話です。
配偶者控除・扶養控除を適用できるかどうかの判定は、準確定申告では「死亡時の現況」により行いますが、通常の確定申告や年末調整では「12月31日の現況」により行います。
したがって、被相続人の死亡時点では被相続人に扶養されていて、その後、年末時点では別の親族に扶養されている場合には、1年で2回控除対象になることが可能となります。
具体例
代表的な例は、夫が妻を扶養していて、夫の死後は子どもが妻(母)を扶養するケースでしょう。
この場合、亡き夫は準確定申告で配偶者控除を受けることができ、さらに子どもは確定申告(年末調整)で扶養控除を受けることができます。
あくまで”所得要件”を満たしていることが前提
上記の例で重複適用が受けられるのは、あくまで妻が「夫の死亡時点」と「12月31日時点」でそれぞれ自らの所得要件を満たしていることが前提です。
所得要件の判定については、夫の準確定申告では、妻の”見積り”の年間合計所得(このままのペースでいくと年間でどのくらい稼ぐ見込みか)をもとに行います。
⇒ 過去ブログ 『被相続人の準確定申告の注意点まとめ③。所得控除編』
これに対し、子どもの確定申告(年末調整)では、妻の”実際の”年間合計所得をもとに判定します。
したがって、相続後の妻の収入状況によっては、夫の準確定申告では配偶者控除を受けられたものの子どもの確定申告では扶養控除を受けられない、といったケース(たとえば夫の死後、妻が相続税の納税のために不動産を売却して多額の譲渡所得が発生した場合など)も想定されることになります。
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
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