アパートの完成前に亡くなった場合。建築中の建物の相続税評価の方法
ポイント:建築中の建物は死亡時までに投下された費用の70%で評価。また、業者へ支払済みの代金が投下費用よりも多ければ『前渡金』、少なければ『未払金』として計上。
こんにちは。税理士の関田です。
賃貸アパート・マンションの建築は相続財産の圧縮効果が大きいことから、地主が相続税対策のために自ら所有する土地を利用して賃貸経営を始めるケースは少なくありません。
しかし、アパート・マンションの建築は計画から着工、完成まで長い期間を要するため、なかには建物の完成を前にオーナーが亡くなってしまうこともあります。
では、建築中に相続が発生した場合、建築中の建物や支払った着手金・中間金はどのように評価されるのでしょうか?
建築中の建物の相続税評価
建物の相続税評価については、通常は固定資産税評価額によりますが、建築途中の場合には当然ながら固定資産税評価額が付されていません。
そこで、建築中の建物については以下の計算式で評価を行います。
建築中の建物の相続税評価額 = 費用現価 × 70%
費用現価とは、亡くなった日までに投下された建築費用のことです。
そうはいっても、もちろんオーナーには費用現価の額は分かりませんので、建築業者に見積もってもらわなければなりません。
具体的には、亡くなった日現在の建築請負工事の進捗割合を記載した証明書・報告書を建築業者に発行してもらい、請負金額に進捗割合を乗じて費用現価の額を算出することになります。
たとえば、請負金額8,000万円で工事の進捗割合が50%の場合、以下のように評価します。
8,000万円(請負金額)× 50%(進捗割合)= 4,000万円(費用現価)
4,000万円 × 70% = 2,800万円(相続税評価額)
着手金・中間金はどのように評価するか?
建物の建築請負契約では通常、建築代金を着手金、中間金(ない場合も)、残金に分けて支払います。
もし建築中に相続が発生した場合、着手金・中間金のうち「支払済みの額」と上記の「費用現価の額」がピタリ一致していればいいのですが、そんな偶然はそうそうありません。
そこで、「支払済みの額」が「費用現価の額」よりも多い場合には差額を『前渡金』として相続財産に計上し、逆に「支払済みの額」が「費用現価の額」よりも少ない場合には差額を『未払金』として相続財産からマイナス(債務控除)することになります。
<具体例>
- 請負金額:8,000万円
- 相続時の工事進捗率:50%
- 代金の支払方法:着手金1,000万円、中間金3,500万円、残金3,500万円
① 着手金のみを支払って亡くなった場合
1,000万円 - 8,000万円 × 50% = △3,000万円 → 『未払金』として債務控除
② 中間金まで支払って亡くなった場合
( 1,000万円 + 3,500万円 )- 8,000万円 × 50% = 500万円 → 『前渡金』として相続財産に計上
建築中は貸家・貸家建付地の評価減ができない
賃貸アパート・マンションについては借主の権利を考慮し、建物については「貸家」として、土地については「貸家建付地」としてそれぞれ評価減を受けられますが、建築中の場合はまだ賃貸を開始していないわけですから、当然ながら評価減は受けられず、「自用家屋」「自用地」として評価することになります。
ただし、古い建物を取り壊して新しい建物に建て替える場合で、旧建物の賃借人が新建物に引き続き入居すること、立退料の支払いが行われていないことなど、一定の要件を満たす場合には貸家建付地としての評価が認められる可能性もあります。
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
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