内部造作の減価償却・耐用年数。自己所有建物の場合と賃借建物の場合
ポイント:自己所有建物に対する内部造作は建物の耐用年数を、賃借建物に対する内部造作は合理的な見積耐用年数を適用。ただし附属設備部分は附属設備の耐用年数でOK。
こんにちは。税理士の関田です。
新たにオフィスや店舗を構える際、床・天井・壁といった内装工事や電気工事・空調工事など、建物に内部造作を施すことがあるかと思います。
内部造作に要した費用については、当然ながら一度に全額を経費にすることは難しく、減価償却により徐々に経費化していくことになります。
それでは、減価償却の際の耐用年数はどのように決めたらよいのでしょうか?
目次
自己所有建物に対する内部造作の耐用年数
原則は建物の耐用年数を適用
自らが所有する建物に対して施した内部造作については、原則として、その建物本体の耐用年数を適用して減価償却を行います。
したがって、たとえば建物本体がRC造だった場合、もし施した内部造作が主に木造であったとしてもRC造建物の耐用年数を適用することになり、木造建物の耐用年数を適用することはできません。
建物附属設備に該当する部分は建物附属設備の耐用年数を適用
ただし、内部造作のうち建物附属設備に該当する部分については、建物附属設備の耐用年数を適用することになります。
したがって、電気工事や空調工事などの附属設備については、内装工事と区分して減価償却を行います。
賃借建物に対する内部造作の耐用年数
原則は合理的に見積もった耐用年数を適用
他人から賃借している建物に対して施した内部造作については、原則として、その建物の耐用年数、造作の種類、用途、使用材質等を勘案し、合理的に見積もった耐用年数を適用して減価償却を行います。
なお、造作の種類ごとに個別に耐用年数を適用して償却することはできず、建物附属設備を除く造作すべてを一つの資産として耐用年数を決定し、減価償却を行う必要があります。
具体的には、次のステップにより耐用年数を決定します。
- 造作工事の見積書を元に、造作の種類ごとに工事費を分ける
- 各造作の使用可能期間を見積もる
- 「各工事費」を「各使用可能期間」で割り、「各年間償却費」を計算する
- 「各工事費の合計額」を「各年間償却費の合計額」で割り、『見積耐用年数』を計算する
<具体例>
造作の種類 工事費 使用可能期間 年間償却費 〇〇工事 120万円 15年 8万円 △△工事 60万円 10年 6万円 □□工事 40万円 8年 5万円 合計 220万円 - 19万円 見積耐用年数:220万円 ÷ 19万円 = 11.5年 → 11年
建物附属設備に該当する部分は建物附属設備の耐用年数を適用
ただし、内部造作のうち建物附属設備に該当する部分については、建物附属設備の耐用年数を適用することになります。
ここは、自らが所有する建物に対する内部造作の取扱いと同じです。
賃借期間を耐用年数とすることができる場合も
なお、以下の条件をすべて満たす場合には、建物の賃借期間を耐用年数として減価償却することも可能です。
- 賃借期間の定めがあること
- 賃借期間の更新ができないこと
- 造作費用の請求又は造作の買取請求ができないこと
ただし、「賃借期間の更新ができない」賃貸借契約というのは、現実的にはかなり少ないものと思われます。
たとえば、定期借家契約の場合、賃貸借契約期間の満了後は更新を行わない旨の定めがあったとしても、当事者間の合意により再契約が可能な場合には、「賃借期間の更新ができない」という条件を満たさないことになります。
まとめ
賃借建物に対する内部造作については、合理的な耐用年数を見積もるのが難しいことから、建物本体の耐用年数を適用してしまっているケースも見受けられます。
しかし、当然ながら建物の耐用年数は非常に長いですので、毎年減価償却費として計上できる金額は少なくなります。
合理的に見積もった場合の耐用年数は、一般的に10年~15年くらいになるケースが多いと思いますので、手間を惜しまず、なるべく短い耐用年数を適用して節税を図りましょう。
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
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