年末調整はいつまでならやり直し可能?差額の精算方法と期限について

ポイント:年末調整後に所得控除額に異動があった場合、翌年1月末日までなら年末調整のやり直しが可能だが、間に合わなければ従業員自ら確定申告を行って過不足額を精算。


こんにちは。税理士の関田です。

10月も半ばを過ぎると、ぼちぼち生命保険料の控除証明書が届き始めます。

いよいよこれから年末調整シーズンに突入となりますが、2018年からの配偶者控除の大幅拡充に伴い、特にパートタイマーの給与収入の見積額のブレによる年末調整のやり直しが増えそうな気がしています。

さて、もし年末調整の計算が間違っていた場合、いつまでならやり直すことができるのでしょうか?

年末調整のやり直しが必要になるケース

まずは、どのような場合に年末調整のやり直しが必要になるのか、主な例を見てみましょう。

年末調整後に扶養親族が増減した場合

配偶者控除や扶養控除の対象者は原則、その年12月31日時点の現況で判定しますので、たとえば年末調整後に結婚した配偶者が控除対象であれば、年末調整のやり直しが可能です。

また逆に、控除対象にしていた配偶者と年末調整後に離婚したような場合には控除額が減ることになるため、年末調整のやり直しを行うことになります。

扶養親族の所得の見積額に変動があった場合

扶養している配偶者や子どもがパート・アルバイトをしている場合には、本人の年末調整を行う際、その時点での配偶者等の年間給与収入の見積額を基に配偶者(特別)控除や扶養控除を行います。

もし年末調整後、配偶者等の見積年収と実額年収にズレが生じたため控除額が変動することとなった場合には、年末調整のやり直しを行うことになります。

2018年からは税制改正により配偶者(特別)控除が大幅に拡充され、配偶者の給与収入が年間201万円に達するまでは控除を受けられるようになった(収入が増えるにつれ控除額は段階的に減少)ため、見積額とのズレによるやり直しは増えることが予想されます。

年末調整後に保険料を支払った場合

社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除については、その年中に支払った保険料が控除対象となります。

年末調整後に新たに生命保険に加入するなどして控除対象となる保険料を支払った場合には、年末調整のやり直しを行うことが可能です。

年末調整のやり直しの期限は?

それでは、年末調整のやり直しはいつまでであれば可能でしょうか?

再調整により還付となる(税額が減る)場合

もし年末調整後に所得控除額が増えることとなった場合、翌年1月31日までであれば会社は年末調整をやり直すことができます。

再調整の結果、過納となった所得税については、会社から従業員へ還付します。

なお、期限に間に合わなかった場合や会社が再調整に応じない場合(再調整は会社の義務ではありません)には、従業員自ら確定申告を行うことにより所得税の還付を受けることができます。

再調整により追加徴収となる(税額が増える)場合

逆に、年末調整後に徴収不足が判明した場合、それが「年末調整後の控除の異動」によるものか、それとも「申告書の記載誤り」によるものかによって取扱いが異なります。

年末調整後に控除に異動があった場合

年末調整後に配偶者の見積所得が当初より増えるなどして所得控除額が減ることとなった場合には、翌年1月31日までであれば会社は年末調整をやり直すことができます。

再調整の結果、徴収不足となった所得税については、会社が従業員から徴収します。

なお、期限に間に合わなかった場合や会社が再調整に応じない場合には、従業員自ら確定申告を行って所得税を追加納付する必要があります。

申告書の記載に誤りがあった場合

会社が提出を受けた扶養控除等申告書などの各種申告書の記載事項に誤り(=ミス)があったため徴収不足税額が生じている場合、会社はそれを知ったら直ちに年末調整のやり直しを行い、不足税額の徴収・納付を行わなければなりません。

つまり、再調整の期限はないということです。

まとめ

配偶者(特別)控除の改正により、これまで兼用だった「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」が分離し、従業員へ渡す年末調整用の書類は3種類に増えました。

  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  • 給与所得者の配偶者控除等申告書
  • 給与所得者の保険料控除申告書

会社としては、年末調整のやり直しによる手間はなるべく避けたいところですので、改正について事前に従業員へ説明・注意喚起しておくことが必要でしょう。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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