2019年度税制改正大綱を読む・その⑤。配偶者居住権の相続税評価等
ポイント:配偶者居住権の相続税評価は建物の「残存耐用年数」と配偶者居住権の「存続期間」によって決まる。特別寄与料に係る相続税の課税方法は代償分割の場合と同じ。
こんにちは。税理士の関田です。
2019年度(平成31年度)税制改正大綱の重要項目解説、5回目は民法(相続法)の改正に伴う措置についてです。
配偶者居住権等の相続税評価の方法と特別寄与料に対する課税の方法が明らかとなりました。
目次
配偶者居住権等の相続税評価の方法
配偶者居住権とは
改正民法(相続法)では、夫または妻の死後の配偶者の生活を保障するため、新たに「配偶者居住権」という制度を創設しました。
改正後は、居住していた建物を
- 配偶者居住権 … 終身(又は一定期間)、居住建物を無償で使用できる権利
- 負担付き所有権 … 居住権という負担が付いており、自由に使用できない所有権
に分けて別々の人が相続できるようになります。
なお、配偶者居住権については以下の記事で詳しく解説しています。
⇒ 過去ブログ 『改正相続法の施行日が決定・その⑤。配偶者の居住権の保護』
配偶者居住権等の評価
税制改正大綱では、建物の①配偶者居住権と②負担付き所有権、さらにはその敷地の③利用権と④所有権の相続税評価の方法が明らかとなりました。
配偶者居住権を相続した場合には、その敷地を利用する権利も評価して相続税の課税対象とされます。
① 配偶者居住権の評価
建物の時価 - 建物の時価 ×(残存耐用年数 - 存続年数)÷ 残存耐用年数 × 存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率
※1 残存耐用年数 … 居住建物の法定耐用年数に1.5を乗じて計算した年数から居住建物の築後経過年数を控除した年数
※2 存続年数 … 次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に定める年数
- 終身の配偶者居住権の場合 … 配偶者の平均余命年数
- 一定期間の配偶者居住権の場合 … 配偶者居住権の存続期間の年数(配偶者の平均余命年数を上限)
② 配偶者居住権が設定された建物の所有権(負担付き所有権)の評価
建物の時価 - ①配偶者居住権の価額
③ 配偶者居住権に基づく居住建物の敷地の利用に関する権利
土地等の時価 - 土地等の時価 × 存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率
④ 居住建物の敷地の所有権等
土地等の時価 - ③敷地の利用に関する権利の価額
特別寄与料に対する課税の方法
特別寄与料とは
改正民法(相続法)では、無償で被相続人の介護・看護等に貢献してきた相続人以外の親族(特別寄与者)について、相続が開始した後、相続人に対し「特別寄与料」として金銭を請求する権利を認めました。
特別寄与料ついては以下の記事で詳しく解説しています。
⇒ 過去ブログ 『改正相続法の施行日が決定・その④。相続人以外の特別寄与者の権利』
特別寄与料に対する課税
特別寄与料を受け取った側・支払った側に対する課税方法は、基本的には遺産の代償分割を行った場合の取扱いと同じです。
特別寄与者側の取扱い
特別寄与者に支払われる特別寄与料の額が確定した場合には、特別寄与者がその特別寄与料の額に相当する金額を被相続人から遺贈により取得したものとみなし、相続税が課税されます。
これにより新たに相続税の申告義務が生じた場合には、特別寄与料の額が確定したことを知った日から10ヵ月以内に相続税の申告書を提出しなければなりません。
特別寄与料を支払った相続人側の取扱い
相続人が特別寄与者に対して支払った特別寄与料の額は、その相続人に係る相続税の課税価格から控除されます。
なお、既に相続税の申告が済んでいる場合には、更正の請求を行うことが可能です。
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
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