一人会社設立時の社会保険料の節約術。社会保険加入のタイミングは?
ポイント:会社を設立したら原則、社会保険に加入しなければならない。無給の場合は加入する必要はないが、あえて少額の役員報酬をとることで保険料を節約できる場合も。
こんにちは。税理士の関田です。
脱サラして法人を作る場合と、個人事業主が法人成りする場合、いずれの場合も、まずは社長自身の社会保険(健康保険と年金)をどうすべきかという問題に直面します。
うまく工夫をすれば、年間数万円~数十万円の社会保険料を節約できるかもしれません。
会社設立直後の社会保険の選び方についてまとめました。
法人の社会保険の加入義務
原則として強制加入
会社を設立した場合、会社の規模や業種に関係なく、社会保険に加入する義務があります。
つまり、たとえ社長ひとりの会社であっても、一定以上の給与(役員報酬)を支給している場合には社会保険に加入しなければなりません。
健康保険と厚生年金はセットで加入
会社で社会保険に加入する場合は、健康保険と厚生年金にセットで加入しなければなりません。
たとえば「健康保険は国保のままで厚生年金だけ加入」あるいは「協会けんぽだけ加入して年金は国民年金のまま」といったように、どちらか一方だけに加入することはできませんのでご注意ください。
役員報酬が0円の場合は?
しかし、会社設立当初は売上も少なく、しばらくは社長の給与(役員報酬)がゼロという場合もあるかと思います。
会社が支払う社会保険料のうち個人負担分(2分の1)は給与から天引きすることになりますが、給与がゼロの場合や、社会保険料を天引きできないほど低い給与の場合には、社会保険に加入することができません。
このようなケースでは、国民健康保険や国民年金などに加入することになります。
サラリーマンを辞めて会社を設立する場合
健康保険
サラリーマン時代は勤務先の組合・協会の健康保険に加入していますが、退職すると退職日の翌日から被保険者資格を喪失しますので、次なる健康保険を選択しなければなりません。
全部で3つの選択肢がありますが、基本的な流れとしては、
・役員報酬の支給開始前 … ①国民健康保険と②任意継続のいずれかを選択
・役員報酬の支給開始後 … ③会社で健康保険に加入
となります。
①国民健康保険に加入
お住まいの市区町村の役所で国民健康保険の加入手続きを行います。
退職日の翌日から14日以内に手続きを行う必要があります(多少遅れても大丈夫です)が、健康保険証が無い期間が続くと何かと不便ですので、早めに手続きした方がよいでしょう。
保険料は前年の所得(つまりサラリーマン時代の所得)をベースに計算されますので、それなりの給与をもらっていた方であれば結構な金額になります。
②サラリーマン時代の健康保険を任意継続
退職後2年間は、勤務先で加入してた健康保険を任意継続することができます。
退職日の翌日から20日以内に元勤務先の組合・協会で手続きを行う必要があり、こちらは1日でも遅れたらアウトです。
保険料は退職時の給与をベースに計算されますが、これまで半額負担で済んでいたのが全額自己負担になりますので、サラリーマン時代よりも負担感は増します。
ただし、一般的には国民健康保険より安く済むケースが大半のため、任意継続を選択する方は比較的多いです。
③会社で健康保険に加入
設立した会社で一定以上の役員報酬の支給を開始した場合には、会社で社会保険に加入しなければなりません。
保険料は設定した役員報酬をベースに計算されますので、役員報酬を低く抑えれば、国保や任意継続と比べて保険料が大幅に安くなるケースもあります。
年金
サラリーマン時代は国民年金(第2号被保険者)と厚生年金に加入していますが、退職すると退職日の翌日から被保険者資格を喪失します。
退職後の年金の選択肢は健康保険よりもシンプルで、
・役員報酬の支給開始前 … ①国民年金の第1号被保険者になる
・役員報酬の支給開始後 … ②会社で厚生年金に加入
という流れになります。
①国民年金の第1号被保険者になる
退職後、設立した会社で社会保険に加入するまでは国民年金の第1号被保険者になります。
保険料は一律です(2018年度は月額16,430円)。
②会社で厚生年金に加入
設立した会社で一定以上の役員報酬の支給を開始した場合には、会社で社会保険に加入しなければなりません。
保険料は設定した役員報酬をベースに計算されますが、最低でも月1万6,000円程度(会社負担と個人負担の合計で)はかかりますので、厚生年金に加入したからといって保険料を節約できるわけではありません。
もっとも、厚生年金に加入していれば将来の年金受給額は増えますので、損得については一概にはいえないところもあります。
個人事業主が法人成りする場合
健康保険
個人事業主の方は、基本的には国民健康保険に加入しているかと思います(医師国保など、業種ごとの国民健康保険組合に加入している場合もありますが)。
法人成り後は、
・役員報酬の支給開始前 … ①国民健康保険のまま
・役員報酬の支給開始後 … ②会社で健康保険に加入
という流れになります。
①国民健康保険のまま
会社で社会保険に加入するまでは、特に何もする必要はありません。
保険料は前年の所得をベースに計算されます。
②会社で健康保険に加入
設立した会社で一定以上の役員報酬の支給を開始した場合には、会社で社会保険に加入しなければなりません。
保険料は設定した役員報酬をベースに計算されますので、役員報酬を低く抑えれば、国保と比べて保険料が大幅に安くなるケースもあります。
年金
個人事業主の方は国民年金にのみ加入しています(第1号被保険者)。
法人成り後は、
・役員報酬の支給開始前 … ①国民年金の第1号被保険者のまま
・役員報酬の支給開始後 … ②会社で厚生年金に加入
という流れになります。
①国民年金の第1号被保険者のまま
会社で社会保険に加入するまでは、特に何もする必要はありません。
保険料は一律です(2018年度は月額16,430円)。
②会社で厚生年金に加入
設立した会社で一定以上の役員報酬の支給を開始した場合には、会社で社会保険に加入しなければなりません。
保険料は設定した役員報酬をベースに計算されますが、最低でも月1万6,000円程度(会社負担と個人負担の合計で)はかかりますので、厚生年金に加入したからといって保険料を節約できるわけではありません。
もっとも、厚生年金に加入していれば将来の年金受給額は増えますので、損得については一概にはいえないところもあります。
まとめ
会社の社会保険加入は義務ではあるものの、実際には年金事務所からの加入勧奨があるまではあえて社会保険に加入していない会社も多く存在しています(いわゆる「社会保険未加入問題」)。
しかし場合によっては、役員報酬を少しでも支給し社会保険に加入することで、健康保険料を大幅に節約できる可能性もあります。
事前にシミュレーションを行い、なるべく保険料を節約できる方法を考えましょう。
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
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