相続税申告では必ず名寄帳を取得。課税明細書だけではダメな理由
ポイント:名寄帳には同一人がその自治体で所有している不動産が網羅的に記載されている。課税明細書だけを頼りにすると不動産の申告漏れが発生する場合も。
こんにちは。税理士の関田です。
相続税の申告をご依頼いただく際、不動産の評価に必要な資料として「名寄帳」の取得をお願いしています。
『固定資産税の課税明細書じゃダメなんですか?』とよく聞かれるのですが、これにはきちんとした理由があります。
実際のところ、「名寄帳」と「課税明細書」にはほとんど同じ内容が記載されているのですが、「課税明細書」だけを頼りに申告書を作成すると、思わぬ不動産の申告漏れにつながる恐れがあるのです。
目次
固定資産税課税明細書と名寄帳
固定資産税課税明細書とは?
固定資産税の課税明細書とは、毎年4~6月頃、市区町村から固定資産税の納税通知書とともに郵送されてくる書類です。
固定資産税が課税される土地・家屋の所在地や面積、評価額、課税標準額、税額などが記載されています。
納税通知書と一体になっていることが多いのですが、不動産の数が多い場合には別紙になっているケースもあります。
なお、共有不動産の場合は、共有者のうち代表者1名のところへ届きます。
名寄帳とは?
名寄帳とは、同一人がその自治体で所有している不動産が一覧になっている書類です。
記載内容については課税明細書とほとんど同じです。
役所の資産税担当窓口などで取得(郵送による取得も可)しますが、基本的に有料となります。
ちなみに、川越市の場合は1通200円(5筆5棟まで)かかります。
⇒ 川越市HP 『固定資産関係証明交付申請書のダウンロード』
共有不動産については別紙となりますので、『被相続人〇〇の名義が入っている不動産の名寄帳をすべてください』とお願いしましょう。
なぜ相続税の申告に名寄帳が必要なのか?
課税明細書と名寄帳に記載されている内容はほぼ同じであるにもかかわらず、わざわざ名寄帳を取得する必要があるのは以下の理由からです。
免税点に満たない場合は課税明細書が送られてこない
固定資産税には免税点というものがあり、同一人がその自治体で所有している不動産の課税標準額の合計が以下の金額に満たない場合には固定資産税が課税されません。
- 土地の場合 … 30万円
- 家屋の場合 … 20万円
免税点未満で固定資産税が課税されない場合、通常は課税明細書が送られてきませんので、その自治体の不動産を把握するには名寄帳を取る必要があるのです。
課税明細書には非課税物件が載っていないケースも
課税明細書には、固定資産税が非課税となる不動産が記載されていないケースがあります(自治体によっては載っている場合も)。
たとえば、私道(公衆用道路)などです。
固定資産税は非課税となっている私道でも、相続税の申告上は評価対象となるケースがあります。
名寄帳には固定資産税の課税・非課税を問わず所有不動産が網羅的に記載されていますので、不動産の申告漏れを防ぐことができます。
共有不動産の課税明細書が送られてこない場合も
前記の通り、共有名義の不動産がある場合、課税明細書は共有者のうち1名の元にしか送られてきません。
共有者のうち課税明細書が送られてこない方が亡くなった場合、名寄帳を取得しなければ共有不動産を把握できません。
まとめ
名寄帳を取得すれば、不動産が申告漏れになる恐れは基本的にはなくなります。
ただし、名寄帳は自治体ごとに取得しますので、名寄帳を取得した自治体にある不動産の申告漏れは防げますが、その自治体に不動産があることを相続人が知らない場合はそもそも名寄帳自体の取得が漏れてしまいます。
現にかつて、被相続人名義の土地が遠隔地にあり、免税点未満で課税明細書が送られてこなかったため相続人全員がその土地の存在を知らず、申告漏れとなってしまったケースがありました(税務調査前の意見聴取で発覚して修正申告に…)。
固定資産税のかからない別荘地や原野(いわゆる”原野商法”で買った土地などは要注意)をお持ちの場合には、次の世代にその存在をきちんと伝えておくことが重要です。
相続税の申告が必要ない場合でも、遺産分割~相続登記は必要となりますので。
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
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