個人の外注先へ支払う報酬と源泉税。源泉徴収漏れを指摘されたら?

ポイント:外注先へ支払う報酬について源泉徴収漏れとなった所得税を支払者側が負担する場合、外注先へ追加で報酬を支払ったものとして処理することができる。


こんにちは。税理士の関田です。

フリーランスの外注先に対して報酬を支払う場合、報酬の種類によっては所得税の源泉徴収が必要となる場合がありますが、なかには外注先の個人事業主自身が源泉徴収の必要性を認識していないケースもあります。

もし外注先から源泉徴収税額が記載されていない請求書が送られてきた場合、また、もし税務調査で源泉徴収漏れを指摘された場合には、どのような対応をとるべきでしょうか?

源泉徴収が必要な外注費

法人または源泉徴収義務のある個人事業主(従業員に給与を支払っている個人事業主)が、個人の外注先に対して以下のような報酬・料金を支払う場合、所得税の源泉徴収が必要となります。

  1. 原稿料、講演料、デザイン料など
  2. 弁護士、税理士、司法書士など特定の資格者に支払う報酬
  3. 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
  4. プロスポーツ選手、モデル、外交員などに支払う報酬
  5. 芸能人、芸能プロダクションを経営する個人に支払う報酬
  6. ホステス、コンパニオンなどに支払う報酬
  7. プロ野球選手の契約金など
  8. 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金

なお、上記のうち「f.ホステス、コンパニオンなどに支払う報酬」については、源泉徴収義務のない個人事業主であっても源泉徴収が必要です。

源泉徴収した所得税は、報酬を支払った月の翌月10日までに税務署へ納めるのが原則です。

ただし「b.弁護士、税理士、司法書士など特定の資格者に支払う報酬」については源泉所得税の「納期の特例」の対象となっていますので、「納期の特例」を受けている場合には半年に一度の納付でOKです。

請求書に源泉所得税が記載されていなかったら?

本来源泉徴収が必要な報酬について、外注先から送られてきた請求書に源泉徴収税額の記載がなかったときはどう対応すべきでしょうか?

もし源泉所得税を差し引かず請求金額をそのまま支払った場合、源泉徴収義務者である支払者側の「源泉徴収漏れ」となってしまいます。

外注先には、源泉徴収が必要な報酬である旨を説明し、源泉所得税控除後の報酬を支払うようにしましょう。

税務調査で源泉徴収漏れを指摘されたら?

もし税務調査で過去に支払った報酬の源泉徴収漏れを指摘された場合、外注先に源泉所得税を負担してもらえるかどうかで対応が分かれます。

外注先から源泉所得税を回収できる場合

外注先から徴収漏れとなった源泉所得税を回収できる場合には、

  • 源泉所得税分を振り込んでもらう
  • 次回の支払いの時に差し引く

といった方法により回収することになります。

外注先から源泉所得税を回収できない場合

単発の依頼だった場合や支払者側に落ち度があった場合など、外注先から源泉所得税を回収するのが困難なときは、やむを得ず支払者側で源泉所得税を負担することになります。

このようなケースで、支払者側が負担した源泉所得税を損金経理(経費処理)した場合には、外注先に対する報酬の追加払いとして処理することができます。

<具体例>

  • 原稿料100,000円を源泉徴収せず外注先に支払い
  • 税務調査で「100,000円×10.21%=10,210円」の源泉徴収漏れを指摘
  • 10,210円は外注先から回収できず支払者側で負担

「10,210円」を”税引手取額”として外注先へ報酬を追加払いしたものとして処理する。

つまり、「10,210円÷(1-0.1021)=11,370円」の追加報酬から「11,370円×10.21%=1,160円」を源泉徴収し、差引「11,370円-1,160円=10,210円」を支払ったものとする。

税務署に納める源泉所得税は、当初源泉徴収漏れとなっていた「10,210円」と追加報酬に対する源泉所得税「1,160円」との合計額「11,370円」となる。

外注先に支払う報酬は、当初の報酬「100,000円」と追加報酬「11,370円」との合計額「111,370円」となる。

結果的に、当初に支払った原稿料100,000円は源泉所得税控除後の手取額だったということになる。

「100,000円÷(1-0.1021)=111,370円」

まとめ

報酬については源泉徴収が必要かどうか微妙なものも多く、税務調査でも論点になりがちです。

源泉徴収漏れがあった場合には、先方から源泉所得税分を回収できないリスクがあるだけでなく、不納付加算税や延滞税といったペナルティーも支払者側が負担することになります。

外注先に対しては、事前に源泉徴収制度に関する説明を十分に行い、理解を得ておくことが重要です。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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