事業所得と不動産所得がある場合の青色申告。1室でも65万円控除?

ポイント:事業所得について複式簿記による帳簿を作成していれば、非事業的規模の不動産所得については簡易な帳簿のみでも65万円の青色申告特別控除を受けられる。


こんにちは。税理士の関田です。

個人事業主が青色申告を行う場合、事業所得であれば複式簿記による帳簿を作成することで「65万円」の青色申告特別控除を受けることができますが、不動産所得であれば複式簿記による帳簿を作成したうえで、いわゆる「事業的規模」要件を満たさなければ「65万円」の控除は受けられません(事業的規模以外の場合は「10万円」控除)。

それでは、事業所得と”非事業的規模”の不動産所得がある場合の青色申告特別控除はどのように適用されるのでしょうか?

不動産所得が事業的規模かどうかの判定

まずは、不動産所得が事業的規模に該当するかどうかの判定基準について確認します。

貸家の場合は5棟10室基準により判定

建物の賃貸を行っている場合には、

  • 戸建の貸家であれば5棟以上
  • アパートなどの共同住宅であれば10室以上

あれば「事業的規模」と判定されます。

駐車場の賃貸は「5台=1室」とみなす

月極駐車場の賃貸については「車5台分」を「共同住宅1室」に換算することが一般的に認められています(明文規定はありません)ので、

  • 月極駐車場のみの場合には50台分(≒10室)
  • アパートと月極駐車場がある場合には、例えばアパート6室と月極駐車場20台分(≒4室)

の賃貸を行っていれば「事業的規模」と判定されます。

共有の場合も単純に棟数・室数で判定

もし貸家等を共有で持っている場合でも、5棟10室基準を満たすかどうかは単純に棟数・室数で判定します。

例えば、15室のアパートを3名で3分の1ずつ共有で持っていたとしても、共有持分で按分して

「15室 × 1/3 =5室」 → 非事業的規模

とは考えず、3名それぞれが15室を賃貸しており全員が「事業的規模」に該当するものと判定されます。

青色申告特別控除は「不動産所得」→「事業所得」の順に控除

事業所得と不動産所得が両方ある場合、青色申告特別控除額はまず不動産所得から控除し、控除しきれない残額がある場合には事業所得から控除します。

事業所得と”非事業的規模”の不動産所得がある場合の控除額

事業所得と不動産所得が両方ある場合で、事業所得については複式簿記による帳簿を作成しているものの、不動産所得については「事業的規模」要件を満たしていないため簡易な帳簿しか作成していないケースでは、青色申告特別控除はどのように適用されるのでしょうか?

非事業的規模の不動産所得からも65万円を控除できる

65万円の青色申告特別控除の対象者については「不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営むもの」と規定されています(租税特別措置法第25条の2第3項)ので、不動産所得(事業的規模)または事業所得のいずれかがあれば65万円の控除を受けることが可能ということになります。

したがって、事業所得と不動産所得が両方ある場合には、不動産賃貸業の規模にかかわらず65万円控除の要件を満たすことになり、たとえ不動産所得がマンション1室の賃貸のみであっても、不動産所得から最大65万円を控除することができます(控除しきれなかった金額は事業所得から控除)。

非事業的規模の不動産所得は貸借対照表の添付不要

非事業的規模の不動産所得について65万円の青色申告特別控除を受ける場合、事業所得だけでなく、不動産所得についても複式簿記による記帳・貸借対照表の添付が必要なのではないかという疑念が生じますが、不動産所得については簡易な記帳のみで貸借対照表の添付がない場合でも65万円控除を受けることができます。

事業所得が赤字でも非事業的規模の不動産所得から65万円控除可能

青色申告特別控除前の事業所得が65万円以上の黒字であれば、控除の順番の問題でまず不動産所得から控除されるにせよ、最終的には65万円がその人の「所得」から控除されることに変わりありませんので、不動産所得が事業的規模か否かはあまり気にならないかもしれません。

しかし、例えば事業所得が赤字で不動産所得が非事業的規模の場合、まさに非事業的規模の不動産所得から65万円を控除することになるわけですが、これも全く問題ありませんのでご安心ください。

もちろん、赤字の事業所得について複式簿記による記帳を行い、貸借対照表を添付していることが条件となります。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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