建物購入直後に行うリフォーム代の取扱い。修繕費で落とせるか?

ポイント:建物の購入直後に行ったリフォーム工事代については、明らかに「修繕費」に該当するものであっても資産計上が必要になる可能性あり。


こんにちは。税理士の関田です。

アパート・マンションのリフォーム工事代が「修繕費」になるのかそれとも「資本的支出」になるのか、この判定は運命の分かれ道です。

「修繕費」であれば全額経費になるため利益圧縮・節税できますが、「資本的支出」に該当する場合には一旦資産計上して減価償却しなければなりません。

ところで、内容的には「修繕費」に該当する工事でも資産計上しなければならないケースがあるのをご存知でしょうか?

資本的支出と修繕費

判定方法

「資本的支出」とは、その資産の価値を高め、あるいは使用可能期間を延長させるような支出のことをいいます。

一方「修繕費」とは、その資産の通常の維持管理のために要する支出のことです。

しかし中にはどちらに該当するのか微妙な工事もありますので、その場合、実務上は以下のページに記載されている形式基準で判断するのが一般的です。

⇒ 国税庁HP 『タックスアンサー(修繕費とならないものの判定)』

国税庁のページは文字だけなので分かりにくいですが、『資本的支出 修繕費 判定』などで検索すれば、もっとわかりやすい図解・フローチャートがたくさん見つかると思います。

詳しい判定方法については、今回の本題からは外れますので割愛します。

外壁塗装や屋上防水は全額「修繕費」にできる可能性が高い

アパート・マンション経営を行っている場合、10~20年に一度は外壁塗装工事や屋上防水工事といった大規模修繕を実施することになるかと思います。

これらの工事は金額が大きいため「資本的支出」として資産計上すべきかどうか悩むところですが、明らかに工事前より豪華な外壁素材を使用している場合などを除き、通常の維持管理の範囲内として「修繕費」に該当する可能性が高いです。

もし不安な場合は、念のため形式基準(前年末の取得価額の10%以下かどうか)に当てはめてみるとよいでしょう。

購入直後に行ったリフォーム代は?

内容的には「修繕費」でも資産計上

もし中古のアパート・マンションを購入した後すぐに大規模修繕・リフォーム工事を行った場合には注意が必要です。

工事内容が通常の維持管理の範囲内であったとしても「修繕費」にはできず、建物の取得価額に含めるなどして資産計上する必要があります。

これは、購入直後に行った工事代はそのアパート・マンションを事業の用に供するために要した費用と考えられるためです。

具体例

ピンとこない方のために事例でご説明しましょう。

たとえば、ちょうど大規模修繕の時期に差し掛かった中古アパート(時価1,000万円)があるとします。

このアパートを売買する際、もし売主側で大規模修繕(200万円)を実施する場合には1,200万円で売買が成立することになる(あくまで理論上は)ので、買主は建物取得価額1,200万円で減価償却を行います。

一方、売主側が大規模修繕を行わない場合には1,000万円で売買が成立しますが、もし買主が購入直後に行った大規模修繕工事代200万円を「修繕費」にしてしまうと、上記のケースと辻褄が合わなくなってしまいます。

したがって、売買代金1,000万円だけでなく大規模修繕工事代200万円も資産計上して減価償却を行うのが正しい処理となるわけです。

まとめ

実務上は、「購入直後」というのがどの程度のタイムラグを指すのかが悩ましいところです。

もちろん、単に購入から工事までの期間の長短だけで考えるのではなく、工事内容が「事業の用に供するための支出」といえるかどうか等を総合的に判断して処理することになります。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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