回数券の売上計上時期は?法人税(改正後)・所得税・消費税の取扱い

ポイント:法人の場合は回数券「利用時」の売上計上が原則に。個人事業主の場合は回数券「販売時」の売上計上が原則。消費税上はいずれの場合でも「利用時」の課税売上。


こんにちは。税理士の関田です。

整体院やマッサージ店、エステサロン、喫茶店・カフェなどが発行する回数券の売上計上時期については、以前は法人・個人事業主ともに回数券の販売時に一括計上するのが原則でした。

しかしながら、「収益認識に関する会計基準」の導入に伴う法人税基本通達の改正(平成30年6月)により、現状は法人税と所得税で取り扱いが分かれています。

ここで今一度、法人・個人事業主それぞれの回数券の売上計上時期について整理しておきます。

法人の場合

法人の場合、平成30年6月の通達改正を境に取り扱いが変更されましたので注意が必要です。

回数券の利用時に売上計上

法人が回数券を発行した場合には、回数券の販売時に受け取った対価は一旦『前受金』として処理し、回数券の利用時に売上計上するのが原則となりました。

通達改正前はこの方式を採用するには税務署長の確認が必要でしたが、改正後は税務署長の確認は不要とされています。

未使用分は10年経過時点で収入へ振替

なお、回数券の発行日から10年が経過した日の属する事業年度終了の時において未使用の回数券がある場合には、その事業年度において収入計上することとされています。

また、10年が経過する前に次の事実が生じた場合には、その生じた日の属する事業年度において収入計上しなければなりません。

  1. 法人が発行した回数券をその発行した事業年度ごとに区分して管理しないこと又は管理しなくなったこと
  2. 回数券の有効期限が到来すること
  3. 法人が継続して収入計上を行うこととしている基準に達したこと

個人事業主の場合

所得税上の取扱いについては、以前と変わりありません。

原則:回数券の販売時に売上計上

個人事業主が回数券を発行した場合には、原則として回数券の販売時に一括で売上計上することとされています。

例外:回数券の利用時に売上計上(税務署長の確認が必要)

ただし例外として、あらかじめ以下の事項について所轄税務署長の確認を受けている場合には、継続処理を前提に、回数券の利用時に売上計上することも認められています。

  • 回数券の販売時に受け取った対価は一旦『前受金』として処理し、回数券の利用時に売上計上すること
  • 回数券を発行した年以降4年を経過した年の12月31日時点で未使用の回数券がある場合には、その年に収入計上すること(ただし、その年より前に有効期限が到来するものについては有効期限の翌日に収入計上すること)

この処理を行う場合には、事前に所轄税務署へ「商品引換券等の発行に係る収益計上基準の確認申出書」を提出しなければなりません。

消費税の取扱いは?

消費税上は、売上計上時期に関わらず、回数券の利用時に課税売上を認識します。

このため、個人事業主で販売時に売上計上している場合には、売上計上時期と課税売上の認識時期にズレが生じることになります。

なお、未使用分を収入に振り替える際には、実際にサービスの提供等が発生しているわけではありませんので、消費税は不課税となります。

まとめ

通達改正により、法人については売上計上時期と消費税の課税時期が一致することになりましたが、個人事業主の場合は原則的な経理処理を行っている限り両者にズレが生じてしまいます。

消費税の免税事業者であれば問題ありませんが、課税事業者となっている場合(あるいは将来、課税事業者になることが見込まれる場合)には、混乱を生じさせないためにも税務署長の確認を受けて『前受金』方式の処理を行うことをお勧めします。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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