フリーレント期間のある賃貸借契約。家賃の収入計上時期は?

ポイント:フリーレント期間中は収入計上しない方法と、賃貸期間中の賃料総額を全賃貸期間に配分して収入計上する方法のいずれかを選択。中途解約不可の場合は後者による。


こんにちは。税理士の関田です。

賃貸物件の空室対策として、契約当初数か月分の賃料を無料にする、いわゆる「フリーレント期間」を設けた賃貸借契約が増えています。

主にオフィスビルの賃貸借でよく行われる契約形態ですが、近年は居住用アパート・マンションの賃貸借契約でも時折見受けられます。

さて、フリーレント期間を設けた場合の家賃の収入計上方法には2つのパターンがあるのをご存知でしょうか?

フリーレント期間と収入計上時期・2つのパターン

フリーレント期間がある場合の賃料の収入計上時期については以下の2つのパターンがありますが、「中途解約不可」の契約でない限り、どちらのパターンを採用しても構いません

パターン①・フリーレント期間は収入を計上しない

フリーレント期間中は収入計上を行わず、フリーレント期間が終了して賃料を受領し始めてから収入計上を開始します。

経理処理が容易なため、実務上はこちらを採用するケースがほとんどです。

<具体例>

  • 契約期間:3年
  • 賃料:30万円(フリーレント3ヵ月)
  • 共益費:5万円

契約~3ヵ月目

(借)現預金 50,000 (貸)共益費収入 50,000

4ヵ月目~36ヵ月目

(借)現預金 350,000 (貸)賃料収入 300,000
    (貸)共益費収入 50,000

パターン②・賃料総額を賃貸期間で按分して収入計上する

「賃料総額をフリーレント期間も含めた全賃貸期間で按分した金額」を実質的な月額賃料と考え、これを全賃貸期間にわたって収入計上します。

<具体例>

  • 前提条件はパターン①の例と同じ

契約~3ヵ月目

(借)未収入金 275,000 (貸)賃料収入 275,000
(借)現預金 50,000 (貸)共益費収入 50,000

※ 300,000円 ×(36月-3月)÷ 36月 =275,000円

4ヵ月目~36ヵ月目

(借)現預金 350,000 (貸)賃料収入 275,000
    (貸)共益費収入 50,000
    (貸)未収入金 25,000

中途解約できない契約の場合は注意

なかには「借主都合で中途解約した場合は残存期間分の賃料を支払う」といったように、実質的に中途解約が禁止されている契約もあります。

このような契約の場合、実際に中途解約するか否かにかかわらず、上記の例でいえば

「 30万円 ×(36月-3月)= 990万円 」

を受け取れることが契約段階で確定しています。

したがって、中途解約が禁止され賃貸期間中の受取賃料が確定している賃貸借契約の場合には、上記パターン②の方法により、賃料総額を全賃貸期間で按分し全賃貸期間にわたって収入計上する必要があります。

なお、中途解約した場合には単にフリーレント期間中の賃料相当額を違約金として支払うといった契約の場合には、賃貸期間中の受取賃料が確定しているとはいえませんので、パターン①・②いずれの方法を採用してもOKです。

まとめ

上記は「貸主側」の収入計上方法のお話ですが、逆に「借主側」でも同様の考え方で費用計上を行います。

なお、消費税の取扱いについてはそれぞれの経理処理方法に準じ、収入・費用を計上した時期に課税売上(非課税売上)・課税仕入(非課税仕入)を認識することになります。


※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。

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