30万円未満の少額減価償却資産の勘定科目。消耗品費?減価償却費?
ポイント:「消耗品費」と「減価償却費」どちらで処理しても税務上はOK。ただし、特例適用のための明細書作成を忘れないよう「減価償却費」で処理するのがおすすめ。
こんにちは。税理士の関田です。
会社や個人事業主が10万円以上の物品を購入した場合、決められた耐用年数に応じて徐々に経費化(=減価償却)するのが原則です。
ただし、30万円未満の物品については、一定の要件を満たせば取得した年度にその全額を経費できる特例があります。
今回はこの「少額減価償却資産」の特例を使う場合の経理処理のお話です。
少額減価償却資産の特例とは?
青色申告を行っている中小企業または個人事業主が取得価額10万円以上30万円未満の減価償却資産を取得した場合、特例により事業の用に供した年度にその全額を経費にすることが認められています。
たとえば25万円の新品パソコンを購入したとすると、原則としてパソコンの法定耐用年数である4年にわたって減価償却により経費計上することになりますが、特例により25万円を即時に経費化することもできるのです。
ただし、この特例を使えるのは同一年度に合計300万円までとなっておりますので、もし上記のパソコンを15台購入したとしても特例の対象となるのは12台のみ(25万円×12台=300万円)となり、残り3台は通常の減価償却を行わなければなりません。
勘定科目は「消耗品費」か「減価償却費」か
30万円未満の少額減価償却資産を特例により全額経費にしたい場合、経理処理としては以下の2つのパターンがあります。
「消耗品費」として処理する方法
一つは、単純に「消耗品費」として経費計上する方法です。
<仕訳例>
(借)消耗品費 250,000円 (貸)現金 250,000円
10万円未満の物品を購入したときと同様、直接経費処理するため単純明快ではあります。
「減価償却費」として処理する方法
もう一つは、いったん固定資産科目として計上してから「減価償却費」に振り替える方法です。
<仕訳例>
(借)工具器具備品 250,000円 (貸)現金 250,000円
(借)減価償却費 250,000円 (貸)工具器具備品 250,000円
固定資産勘定を間に挟むため仕訳が2本となり、やや手間がかかります。
おすすめの処理方法は?
税務上はあくまで取得価額の全額を経費計上(損金経理)していればよく、勘定科目名までは問われないため、上記の2つとも正しい処理方法ではありますが、どちらがおすすめかと問われれば「減価償却費」と答えます。
というのも、この特例を適用するためには、
- 法人の場合・・・「別表16(7)・少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書」を添付
- 個人事業主の場合・・・青色申告決算書の減価償却費の計算明細に『措法28の2』を適用する旨を明記
しなければならず、「消耗品費」の中に埋もれさせてしまうと決算・確定申告のときに明細の作成・記入を忘れてしまう恐れがあるからです。
しかしこれを減価償却扱いにしておけば、決算・確定申告の段階で帳簿上の「減価償却費」と別表・減価償却明細とが一致しているかどうかを確認する(はずです)ので、上記のようなミスを防ぐことができます。
まとめ
マネーフォワードやfreeeといったクラウド会計ソフトでも、30万円未満の少額減価償却資産についてはいったん固定資産勘定で処理したうえで固定資産台帳に登録し、その後「減価償却費」に振り替えるという仕様になっているようです。
どうしても「消耗品費」で処理したい場合には、あとで忘れることがないよう、取得した時点で固定資産台帳へ登録しておきましょう。
※ この記事は、投稿日現在における情報・法令等に基づいて作成しております。
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